ブックオフと赤いきつね「CM」刷新と不変の値打 どちらにも「なるほど」と膝を打つ戦略が隠れる

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また、先述したように武田鉄矢さんを起用し続け、「同じ俳優を起用したテレビCMを、最も長い間放映し続けている商品」としてギネス記録に登録されるまでになった「マルちゃん 赤いきつねうどん」を手がける東洋水産は、「武田さんがドラマ『3年B組金八先生』から現在まで幅広く活動の幅を広げて第一線で活躍され続けられたことが継続起用の1つの要因です」と回答する。

1979年『赤いきつね』の初期CM(下)今にいたるまで40年にわたり継続起用される武田鉄矢さん

「『赤いきつねうどん』は1978年の発売ですが、当時はカップ麺の種類も現在ほど多くなく、その中でも数少ない和風のカップ麺かつ斬新なネーミングだったこともあり、とてもユニークな位置づけの商品でした。その商品にふさわしいタレントをCMキャラクターにしたいと考え、当時『幸福の黄色いハンカチ』で人気の高まっていた武田鉄矢さんを起用することになりました」

黄色いハンカチで人気を博した武田鉄矢さんを、赤いきつねに起用するという戦略が功を奏すだけでなく、1979年に『3年B組金八先生』(TBS系)がスタートしたということも重なり、40年以上愛され続けるCMになったというから面白い。また、2016年から共演する濱田岳さんに対しても、

「ブランドの顔として定着している武田鉄矢さんを相方として引き立てつつ、同時に若年層へのアピールを強めることも意識しました。かつて、『3年B組金八先生』で先生と生徒役で共演していた『師弟関係の復活』といったストーリー性があることも決め手でした」

と明かすように、宇宙人ジョーンズ同様、メインキャラクターを引き立てるための工夫を施すことで、“長寿CMだけど飽きさせない”ことに成功していると言えるだろう。

長いことは信頼関係や安定感にもつながる

「長いということは、今まで実績・功績もあり、その人を見ればその商品企業をイメージできるということの表れです。これは信頼関係、安定感にもつながります」とは、前出の品田さん。

『金八先生』で先生と生徒役で共演した濱田岳さんも現在はCMに出演

「タレント広告というのは、モノを売る、メッセージを伝える道具。長いという安定感・信頼感がつくと、単なる道具ではなく、もっと深い関係を想像させます。同じ人を長く使う企業・CMというものは温かいものを感じられますよね」

ガラリと変える、あえて変えない……人それぞれ好みはあれど、どちらにも「なるほど」と膝を打つ戦略が隠されている。そんな点に注目してCMを見てみると、意外な気づきがあって面白いかもしれない。

我妻 弘崇 フリーライター

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あづま ひろたか / Hirotaka Aduma

1980年北海道帯広市生まれ。東京都目黒区で育つ。日本大学文理学部国文学科在学中に、東京NSC5期生として芸人活動を開始する。2年間の芸人活動ののち大学を中退し、いくつかの編集プロダクションを経てフリーライターとなる。現在は、雑誌・WEB媒体等で幅広い執筆活動を展開している。著書に『お金のミライは僕たちが決める』『週末バックパッカー ビジネス力を鍛える弾丸海外旅行のすすめ』(ともに星海社)など。

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