ブックオフと赤いきつね「CM」刷新と不変の値打 どちらにも「なるほど」と膝を打つ戦略が隠れる
「ファンがつくのは利点ですが、“ファンだから”という理由でその商品を買うようになった人は、タレントが変わったら離れてしまうかもしれない。また、旬の人を起用する場合、契約金の時価も高くなりがちになる、という点も踏まえなければいけないでしょう」
では、CMキャラクターを変えない場合は、どんな狙いがあるのだろうか。再び、企業の例を見ていこう。
1992年の発売以来、「働く人の相棒」という一貫したコンセプトを持つ、サントリー「缶コーヒーBOSS」は、矢沢永吉さん(1992年~1997年)、永瀬正敏さん&布袋寅泰さん(2001年)らがCMキャラクターを務めていたが、2006年から現在にいたるまで「宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ」が定着。
現在放送されている「漁港」篇は、なんと第71弾となり、今や、多数の人が認知する人気CMの1つだ。サントリー食品インターナショナルに話を聞くと――。
「八代亜紀さんの舟歌が登場する『カラオケ』篇が、当時のCM 好感度1位に選ばれたことを受け、宇宙人ジョーンズが定着しはじめました」(コミュニケーションデザイン部・佐野貴子さん)
キャラクターを変えなくても時代性は反映できる
地球調査シリーズを開始した2006年に放映された初期の代表作『カラオケ』篇で手ごたえを感じたことで、「宇宙人ジョーンズ という構図が鮮明になったこともあり、このシリーズを続けていこうという雰囲気ができあがった」と続ける。コンセプトやCMキャラクターを変えないとなると、先のイーオンのような時代の変化を描きづらいようにも感じる。だが、その点も考慮しているという。
「一貫したブランドコンセプトこそありますが、時代ごとのニーズや世相に照らし合わせて、CMの設定やゲストのタレントさんをセッティングしています。時代性を反映することは広告を作るうえでも意識していることなので、ゲストの演者さんが時代感を表現する存在になることもあります」(佐野さん)
例えば、2016年2月に放映が開始された「北海道新幹線」篇は、その1カ月後に控えた新青森駅-新函館北斗駅間の開業を意識したもので、北島三郎さん、石川さゆりさんがゲストとして出演している。
トミー・リー・ジョーンズ扮する宇宙人ジョーンズが、「働く人の相棒」というブランド、すなわち幹を担い、ゲストが枝となって雰囲気や時代感を表現しているという具合だ。先の品田氏の分析を踏まえれば、ブランドコンセプトを変えることなく、ニュース性の高いCMを次々に打ち出すことが可能となる。
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