ブックオフと赤いきつね「CM」刷新と不変の値打 どちらにも「なるほど」と膝を打つ戦略が隠れる

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そういう意味では、昨年末に石原さとみさんから永野芽郁さんにCMキャラクターを変更した英会話イーオンは挑戦的だ。石原さとみさんといえば、『シン・ゴジラ』で日系アメリカ人カヨコ・アン・パタースン役を演じるなど、英語が上手な人というイメージが浸透している。あえて変えることは、リスキーなようにも映る。英会話スクール・AEONを運営するイーオン広報課の山田佳奈さんが答える。

「当社のCMキャラクターは、5年くらいをメドに変わっています。その際、入会希望が多い20代〜30代前半の若い女性にとって身近な若い女優を起用することが多く、今回は幅広い年齢層から人気が高く、また認知度もある永野芽郁さんを起用するにいたりました」

過去CMキャラクターを務めてきた加藤あいさんや天海祐希さんもおよそ5年でバトンタッチしたように、今回の石原さとみさんから永野芽郁さんへのリニューアルも、前提としてタイミング的な理由も含んでいると話す。そのうえで、時代背景やマーケティング面が関係しているという。

「オンラインやアプリが登場したことで、英会話の市場も変わってきています。スクールに行かなくても英会話を学べる時代になったことで、『スクールでしか得られない価値』をお伝えする必要がありました」(山田さん)

2019年のイーオンのキーメッセージは、「この教室が、セカイの入り口」。実際、CMでは永野さんがスクールを訪問し、雰囲気や授業の様子を伝える内容となっている。

CMキャラクターを永野芽郁さんに変更したイーオン

山田さんが「スクールの魅力には、単に英語を学習するだけではなく、仲間と一緒に学べることや、体験的な価値も含まれます。楽しそうな雰囲気を伝えるうえで、親しみやすいキャラクターであり、ご自身も英語を学びたいとインタビュー動画内でもおっしゃっている永野さんが適任だと思っています」と語るように、“英語が話せるほど上達した”という完成されたイメージのある石原さとみさんとは異なる魅力を生かしたCMを作ることができるというわけだ。

起用当時、決して英語が得意というわけではなかった石原さとみさんは、CMキャラクターに就任して以降、着実に英語が上達。過去のキーメッセージである、「イーオンでよかった」(2018年)、「英語でハッピーになろう」(2019年)は、実際に石原さんの英語力が向上していたこともあって、彼女の心情がキーメッセージにリンクしているところもあったそうだ。『シン・ゴジラ』での流暢な英語は、結果的にその成果でもあり、今回の永野さんへのバトンタッチは卒業という捉え方もできる。

“旬な人”を起用すれば話題になりやすい

日経BP総研・上席研究員の品田英雄さんは、変えることのメリットを次のように分析する。

「そもそもCMは、話題になるに越したことはありません。新しいタレントを起用した新CMは、話題になりやすいですよね。『〇〇さんが新キャラクターに』という具合にニュースになるわけです。メディアが取り上げることで拡散されやすく、新しいメッセージも伝わりやすい。また、スポーツ選手などは顕著ですが、“旬”な人を起用できる=そのときに、いちばんいいキャラクターを使えるというメリットもあります」

ただし、いいこと尽くめとは限らないとも。

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