新型肺炎で出社の「拒否・時間変更」はできるか 全社的に在宅勤務にした企業も出てきている

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また、有給休暇の日数には限りがありますので、新型コロナウイルスの流行が長期間にわたって続いた場合、有給休暇を使い果たしてしまうということも考えられます。

有給休暇を使い果たした後も出社拒否をした場合には、欠勤扱いになります。

欠勤は、雇用契約上の労働提供義務に違反していることになりますが、労働基準法第5条で、「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない」とされているため、使用者は出社拒否をしている労働者を強制的に出社させることはできません。ですから、物理的な意味においての出社拒否は認められるということになります。

しかし、欠勤分の賃金が不支給になるというデメリットが生じます。それに加え、就業規則に基づき何らかの懲戒処分を受ける可能性も考えられます。

ただし、新型コロナウイルスを警戒して出社拒否した従業員に懲戒処分をしたことが発覚した場合、当該企業は世論からバッシングを受けるリスクが想定されます。そのため、実務上は、懲戒処分までは行われず、欠勤分の賃金の不支給にとどまるのではないかというのが筆者の見解です。

満員電車を避けたい人

■出退勤時間を変えることはできるのか?

では、出社拒否とまではいかなくても、社員は混雑した電車などを避けるため出退勤時間を変えることはできるのでしょうか。

出退勤時間を変えることができるかは、雇用契約の内容や、勤務している会社の就業規則によります。

出退勤時間を自分でコントロールして、変えることができるのは、次の場合です。

①専門業務型または企画業務型の裁量労働制が適用されている場合
②フレックスタイム制が適用されている場合(ただし、コアタイムが設定されている場合、コアタイムには出社していることが必要)
③高度プロフェッショナル制度が適用されている場合
④管理監督者の職位にある場合

これらのいずれかに当てはまる場合、今まではなんとなく所定労働時間に出社や退社していたとしても、法的には自分で出社時間や退社時間を決めることができる権利を持っているということになります。この機会に、混雑を避けた時間帯で通勤してみてはいかがでしょうか。

上記の労働条件に当てはまらない場合は、原則としては定められた始業時刻に出社し、定められた終業時刻まで勤務しなければなりません。

そのうえで、社員が取れる方法を考えるとしたら、時間単位の有給休暇の申請を行うことです。

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