新型コロナウイルス感染症の国内拡大を、国もようやく認め始めたようだ。安倍晋三首相が2月3日の衆院予算委員会で、国立感染症研究所や地方の衛生研究所でしか行われていない検査について、「民間の検査機関でもできる体制の構築に取り組んでいる。簡易検査キットの開発にもすでに着手した」と発言したという。
ただ、冷静に見れば、簡易検査キットが開発されても現状では特効薬がない。陽性と判明しても、特別な治療ができないなら意味がないのでは?と思われるかもしれない。
受診しても感染しているか調べられない
結論から言えば、新型コロナウイルスの簡易検査キットについては、開発と普及を大いに期待したい。
厚生労働省は2月1日、都道府県宛に「帰国者・接触者外来」を開設するよう指示した。担当させられる医師の心中は「確定診断の方法もないのに、なにを診察しろと? 国内で感染者が増えているのに、帰国者と接触者だけ診察して、何の意味があるのだ?」であろう。
私自身、内科医として日々診察にあたっているが、今は風邪やインフルエンザのトップシーズンでもある。発熱や咳などで受診された患者さんが、検査でインフルエンザ陽性とわかれば、今の状況ではある意味安心だ。インフルエンザには特効薬がある。
一方、インフルエンザ陰性だった場合、その患者さんが新型コロナウイルスに感染していたとしても、市中の医療現場では知るすべもない。初期症状が、風邪やインフルエンザと見分けがつかないことは、すでによく知られている。
もちろん、本人またはその近しい人に、過去2週間以内に中国・湖北省の滞在歴があれば、保健所に連絡して検査をしてもらうことになる。しかし、そのような条件を備えた患者さんには、私自身もいまだ1人も出会っていない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら