これは朗報だ。ウイルスは一般に、バクテリア等よりもゲノムの変異が頻繁に起きる。しかし、感染や増殖に関わる部位が維持されていれば、治療薬や検査法、ワクチンの開発につながる。今回の新型コロナウイルス感染者の激増にどこまで追いつけるかは、わからない。それでも、もしコロナウイルス全般に有効な薬剤が開発できれば、今後いつまた発生するかもしれない未知のコロナウイルスの脅威から人類は大きく救われるだろう。
致死率は下がり、感染力は上がっていく
ところで幸い、新型コロナウイルス感染症の致死率は、今までのところ世界全体で2%超程度だ。しかも、武漢では5.5%との公式発表もあり、武漢以外で見れば0%に近い。2002~2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の致死率は約10%、2012年に発生したMERSは約34%だった。
ウイルス感染症の“常識”から言えば、この数字は、今後も下がることはあっても、急激に上がることはないだろう。
新型コロナウイルスの感染者全体を海に浮かぶ氷山に例えれば、見えている部分が症状の出ている人々で、その先端部分は重症や亡くなられた方、と解釈できる。しかし、水面下に隠れた部分がどれくらいの大きさなのか、つまり無症状感染者がどれくらいいるのかは、まったくわかっていない状況だ。水面下に隠れた部分が大きいほど分母が大きくなるので、死亡率は下がっていく。
ここで重要なのが、ウイルスの特性だ。変異の過程で毒性が強くなることはありうるが、通常、ウイルスは人の体に適応(馴化)し、症状が穏やかになっていくとされている。
ウイルスは体内でできるだけ増殖したいので、宿主をすぐ殺してしまわず、仲良くやっていこうとするのだ。症状が軽くなるほど、感染者は平気で出歩いて他者と交流するので、多くの人に感染が広がる。こうして致死率は下がり、感染力が上がっていくのである。
今回もおそらくそうなるだろう。無症状の人も検出できるようになれば、感染力の数値はさらに上がる。
ただし、いずれにしても現在、中国はそうした調査どころではない。絶え間なく押し寄せる、症状ある患者の対応で手いっぱいだ。ある程度終息が見えてきた後にようやく、千~万人単位の血液検査を行い、抗体の付き具合を調べることで、どの程度感染が広がっていたかが明らかになるだろう。
大切なことは、感染力の上昇を目の当たりにするようなことがあっても、パニックを起こさず、ひたすら地道に予防に努めることだ。あちこちで繰り返し言い続けているが、コロナウイルスの場合、基本は飛沫・接触感染である。十分な睡眠と食事で体力を維持し、手洗いを励行していただきたい。
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