「久遠チョコレート」はなぜ人気となったのか 「SDGs」に取り組み、スタッフの7割が障害者
さらに、高単価で労働生産性が高い。ギフト菓子で、贈る人も贈られる人も笑顔になる。夏目氏の目的にぴったりの商品だった。
障害のある人が力を発揮できる、なおかつブランドとしてのオリジナリティを確保するために、夏目氏は自分たちが売り出していく商品に、次のようなコンセプトを持たせることにした。
1つは、チョコレート生地には余計な混ぜ物をせず、カカオの味わいを楽しめること。2つ目に、デイリーに楽しめるカジュアルなチョコレートにすること。
原料となるクーベルチュールチョコレートやカカオは世界30カ国から、さまざまな個性を持ったものを集めた。中でも南米コロンビアや東南アジアでは現地の生産者と協力してオリジナルのカカオを開発。カカオ豆や、ペースト状にしたものを輸入して使っている。
価格はきちんと利益が出て、スタッフに支払えるような金額を設定。結果としては、「高級チョコ」としてイメージする値段よりは、やや下の価格帯に落ち着いた。
各地の「ご当地の味」が注目された
2014年夏、久遠チョコレートを立ち上げるとすぐにバイヤーに注目され、冬には百貨店での催事が決まったという。
バイヤーが着目したポイントが、各地の「ご当地の味」を取り入れたことだった。
「とくに地方には『福祉の事業をビジネスとして回したいが、どうしたらいいかわからない』という悩みを持つ団体や事業者が多いのです。突破口が見つからない中、久遠チョコレートの取り組みを知り、次々にフランチャイズを申し込んでこられました」(夏目氏)
久遠チョコレートの拠点が全国各地に散らばっているのには、このような理由があった。そして、夏目氏のもう1つの夢とも結びつき、「たくさんのご当地の味」が生まれたのだ。
「久遠チョコレートが独自性を出し、国内のパティシエに勝っていくためには、もう1つ強みが必要。そこで『ディスカバリー・ジャパン』を組み合わせてみたらどうかと思いました。
例えば私の出身地である岡崎市には、額田茶という家康も愛したお茶がある。年貢をお茶で納めることが許され、運ぶときには歌を歌っていた。それがわらべうたの『ちゃちゃつぼ』の由来です。そんな魅力とストーリーをもった食材が、日本にはたくさんあるんです。チョコレートを通じて、日本の魅力を見つけていきたいというのが私の思いです」(夏目氏)
例えば、売り上げの7割を占める主力商品のテリーヌは約150種類まで広がっている。こうして、年間の売り上げが8億円に達するほどに成長した久遠チョコレート。実際、障害のある人が働く場となりえているのだろうか。
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