「久遠チョコレート」はなぜ人気となったのか

「SDGs」に取り組み、スタッフの7割が障害者

「ビジネスとしてパンを販売しようと思えば、日に50種類はラインナップし、開店の10時にはお店に並べていなければならない。当然スピードが要求されるし、スピードについてこられない人は排除することになる。障害のある方の働く場を目指して始めた事業として、ジレンマを抱えていました」(夏目氏)

障害者が働く事業所として、なぜかパンやクッキーなどの工房が多いイメージがある。しかしそれは、支援を目的とした事業所に限った話。

夏目氏はまさに自らの経験を通じて、実際には難しい面が多いことに気づいた。例えばパンなら、食パン、クロワッサン、惣菜パン、菓子パンなどなど、パンによって工程が異なり、オペレーションが複雑になる。仕込みからパンを窯に入れる、出す、並べるなど、動線も絡み合っていて、スピードが要求される現場では、1人の作業の遅れが、全体のオペレーションに大きく影響する。

材料の配合や練り込み、温度管理などが難しく、生地の発酵を含めて仕込みに1晩かかるのに、焼き上がってみると失敗していた、ということも多い。おのずと、パン作りには緊張が伴う。

一方で、日常的に食べられるパンはそれほど高価なものではない。当時の地元の最低時給(681円)を確保するべく、自分が借金まみれになった。しかしスタッフが自立するほどの工賃を支払うことはできなかった。そんなジレンマを断ち切り発想転換するきっかけとなったのが、ある職人との出会いだったという。

ある「ショコラティエ」との出会い

久遠チョコレートのホームページでもショコラティエとして紹介されているのが、野口和男氏。元々お菓子の製造機械の職人だが、欧米では一般的な「ショコラティエ」つまりチョコレート職人の存在が、日本のチョコレート文化では希薄であると感じ、自ら勉強してショコラティエに転身した。

現在、自身では店舗や工房を運営してはいないが、さまざまな食の業界で商品をプロデュースする、知る人ぞ知る存在という。

「野口さんが言ってくれたのが、『正しい素材を正しく使えば、おいしいチョコレートは作れる』という言葉です。ケーキとチョコレートは難しいと思い込んでいたので、まさに“目から鱗”の一言でした」(夏目氏)

2019年9月にオープンした東京・浜田山店(筆者撮影)

日本で高級チョコレートと言えば、生チョコやボンボンショコラが思い浮かぶ。混ぜ合わせる素材によっては生地が分離してしまったりと、温度管理が難しい。また、使う食材や姿形などでいかに付加価値を表現するかが、ショコラティエの発想であり、腕の見せどころともなる。

しかしチョコレートそのものは基本的に、材料を溶かす、型に流して固めるという単純な作業の繰り返しでできあがる。カカオの種類を変えたり、さまざまな食材を混ぜ合わせたりすることで、バリエーションを無限に広げられる。

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