Facebookを去った「もう1人のザッカーバーグ」 「富や名声」よりも人生で大切なことを考えた
2014年に、人生で1番の夢が目の前に現れた。ブロードウェーミュージカルの『ロック・オブ・エイジズ』に出演するチャンスが舞い込んだのだ。
小学校時代から中学、高校、大学に至るまで、私はどこでも、どんな状況でも歌っていた。
夢はもちろん、ミュージカルスターになること! でもその後いろいろあって、あっというまに30代前半になり、気づくとテック業界で働きながら、カリフォルニア郊外で夫と2歳の息子と暮らしていた。夢はとっくにどこかへ消えたはずだった。
ところが、そこが夢というものの不思議なところだ。ときどきふらりと立ち戻り、思いもしないタイミングでこちらを見つけ出す。
その日も突然、『ロック・オブ・エイジズ』のプロデューサーの1人から電話がかかってきた。公演の「新しくフレッシュな」話題として、テック業界からゲストキャストを迎えたいのだという(うそ、これって私が人生で待ち望んでいた瞬間では? いや、ちょっと待って……。はっ! 弟の連絡先を知りたいってこと!? だったら立ち直れない!)。
そのあとプロデューサーから、「数人にランディさんを推薦された」と言われたとき、私がどれだけほっとして歓喜したことか。
提示されたのはショーの主要な役柄だった。夫と少し話し合い、うれし涙をたっぷり流し、私は数日後にニューヨークへ発った。そしてリハーサルを8回行い、『ロック・オブ・エイジズ』のレジーナ役でブロードウェーデビューを飾った。それがどんな体験だったか、言葉にするのは難しい。とにかく私の人生でも特別にすばらしい瞬間だったと言っておこう。
人の人生を生きるのは、もうやめよう
とはいえ、だれもがこの決断を支持していたわけではない。何人かのメンターには、ブロードウェーで歌うなと忠告された。シリコンバレーを離れて、派手なレオタード姿で『ウィア・ノット・ゴナ・テイク・イット』なんて歌ったら、二度とまともなビジネスの相手に見られなくなると。
で、私はどう思ったか? 「そんなのどうでもいい」。
ブロードウェイを諦めて手に入るものが、ほかのすべてを犠牲にして「仕事」を優先し続ける人生でしかないなら、これ以上「仕事」を選ぶことになんの意味がある? これまでさんざん「仕事」に偏り続けて、ようやく別のものを選べるときが来たのに。
もう十分信用も築いたし「仕事」の在庫も十分積み上げた。人生の最期でこんなふうに思わないことだけはまちがいない。「ああ、ブロードウェーで歌わなければよかった。そうすれば、私が何をしても喜ばない人たちを喜ばせることができたのに!」。
そうして私は、他人の夢やビジョンに著しくアンバランスになった長い期間を経て、自分自身の夢に向き合うと決めたのだった。
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