ザッカーバーグの「巨額寄付」は美談ではない 寄付の枠組みを知れば、真の狙いが分かる
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は、450億ドルを慈善活動に寄付したわけではない。
――え? そう聞いたけど?
そう、みんなそう聞いた。だが、実態は違う。ザッカーバーグは、おいしい投資手段を生み出したにすぎない。
フェイスブックの共同創業者として莫大な富を築いたザッカーバーグが、娘の誕生にあたって、妻プリシラ・チャンと保有する資産の99%を寄付すると発表したのは12月1日のこと。その大部分はフェイスブックの株で、現在の評価額は計450億ドルと見られている。
設立したのは慈善団体ではなく有限会社
ザッカーバーグ夫妻は、ビル・ゲイツやジョージ・ソロスのように非営利の慈善団体を立ち上げるのではなく、有限会社を立ち上げた。この会社はすでに、見事なPR戦略を展開して、ザッカーバーグのイメージをとてつもなく上昇させた。
その意味では、ザッカーバーグの今回の投資利益率は、フェイスブック株のそれを著しく上回ると言っていいだろう。何しろ、彼は自分の資産を右のポケットから左のポケットに移しただけなのに、息苦しくなるほど輝かしい表現で各方面から絶賛されたのだ。
有限会社は営利企業に投資できる。政治献金もできるし、法律の改正などを求めるロビー活動もできる。ザッカーバーグはこれからも、自分の資産を100%思い通りに使える。米国においてそれはまったく結構なことだが、それは一般的に「慈善活動」とは呼ばない。
慈善団体は、行政のさまざまな規制や監視を受けるし、毎年一定の割合の資産を、慈善活動に支出しなければならない。「ザッカーバーグ有限会社」はこうした規制の対象にならないし、その活動に透明性を確保する必要もない。