夜間に「救急車」を呼んで起こりうるリスクとは 救急医療の理想と現実に横たわる「ギャップ」

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また、「包丁で指先を切ってしまい、血が止まらない」という理由で救急車を慌てて呼ぶ方もいらっしゃいます。大量出血によるショック状態に陥れば、確かに緊急度が高いと言えますが、指先からの出血は手首などと違い、命に関わるような太い血管がないためすぐに大事には至らないことがほとんどです。血を見ても慌てず、まずは冷静に正しく圧迫止血を行い、心配なら自家用車やタクシーでの受診を検討しましょう。

ほかにも、緊急度が低い事例として、「今日の夕方から発熱があり、インフルエンザの疑いで救急車を呼んだ」なども挙げられます。そもそも、発熱から12~24時間程度経過しなければインフルエンザ迅速キットによる正しい診断はできません。確定診断や処方は後日の外来になることが多く、かえって負担がかかります。

相談窓口について

とはいえ、緊急性があるかどうかの判断に困ることもあると思います。そんなときは「#7119」(救急相談センター)に電話で相談に乗ってもらえます。

東京都内であれば東京消防庁救急相談センターにつながり、医師や看護師、救急隊経験者などの職員が24時間体制で対応しているので、症状や状態を伝えれば、判断を仰げます。先ほどの指を切ってしまった例であれば、圧迫止血の方法や、受診の必要性などを相談することができます。

また、ご加入されている保険会社や健康保険組合、お勤め先の福利厚生団体で、健康相談を24時間受け付けているところもありますので、ご自分のご利用できる番号を確認しておくこともお勧めします。

かかりつけの病院があれば、その病院に直接電話することも有効です。カルテがあれば、普段の病状や内服に照らし合わせたアドバイスをもらいやすいでしょう。ただし、夜間は主治医や専門の先生がいない可能性が高いので注意する必要があります。

電話のみでは確実な診断はつけられず、心配なら受診してください、と言われるかもしれません。それでも症状の悩みを一度聞いて貰うことで気持ちが整理され、不必要な受診を避けることができるでしょう。

上原 桃子 医師・産業医

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うえはら ももこ / Momoko Uehara

横浜市立大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構理事。身体とこころの健康、未病の活動に尽力し、健康経営に関する医療系書籍の編集にも関わっている。医師と患者のコミュニケーションを医療関係者、患者双方の視点から見つめ直すことを課題とし、とくに働く女性のライフスタイルについて提案・貢献することを目指している。

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