夜間に「救急車」を呼んで起こりうるリスクとは 救急医療の理想と現実に横たわる「ギャップ」

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また、日中の外来は待ち時間が長いためと、混雑を避ける目的で夜間に受診する方がいらっしゃいます。しかし、先程もお伝えしましたように、救急外来に行けば自分の病気が正確に診断され、あわよくば治療してもらえると思っていると、専門外の医師にその場しのぎの処置をされ、診断名すらよくわからないまま、結局翌日以降の外来に行かなければならないことになってしまいます。

状況によっては、治療優先度の高い患者さんを優先するために待ち時間が長くなる場合もあります。夜間手当がつくため医療費も日中より高くなることも覚えておく必要があります。

「重症度」と「緊急度」の違い

では、どのような症状であれば積極的に救急車を呼ぶべきでしょうか。それは一言で言えば、「緊急度が高い」と思われる症状が表れた場合です。

「2週間前から胃がもたれる。今晩はとくにひどい! 胃がんかもしれない」

このように訴えて救急車を呼ぶ方がいます。おそらく、この方にほかの症状がなければすぐ自宅に帰され、必要に応じて翌日以降の外来で診ることになるでしょう。なぜなら救急の現場において「緊急度」が低いと判断されるからです。

医療現場では、重い疾患であることを表す言葉に「重症度」「緊急度」という言葉が使われます。この2つは明確に区別されており、わかりやすく言い換えれば重症度は「症状の程度」、緊急度は「治療までの時間」です。そして救急の現場では緊急度が高いもの、つまり1秒でも早く治療すべき疾患が治療対象となります。

例に挙げた方が心配していた胃がんという疾患は、確かに致死率も低くなく、治療が確実に必要ですが、数分や数時間単位で急激に進行する疾患ではありません。すなわち、重症度は高いが緊急度は低い疾患なのです。加えて、「2週間前からずっと」同じような症状であることも、疾患がむしろ進行していない状態であり、緊急度の低さを表しています。

これに対し、例えば「突然、今までにないほど鳩尾(みぞおち)が痛くなった」という症状であれば、心筋梗塞や胃穿孔(何らかの理由で胃に穴が開くこと)が疑われ、すぐに処置しないと命に関わる可能性があります。これらは重症度も緊急度も高い疾患であり、救急現場で見逃してはいけない疾患となります。

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