日本経済や日中関係を考えればやむをえないだろう。特に観光業・小売業が今日、中国観光客に大きく頼っていることは否定できない。中国からの訪日旅行客は2018年には838万人に上り、日本国内で1人平均22万円以上を消費している(うち12万円近くは、百貨店、ドラッグストア、スーパーマーケット、空港内免税店などでの買い物。『訪日旅行データハンドブック2019』による)。単純計算で、2兆円近い市場だ。
しかも、バス運転手たちが武漢からの観光客と行動を共にしたのは、感染発覚よりも2週間も前のことだ。それから発症までの10日余り、国内で日常生活を送る中で、当然ながら多くの人と接触している。その間に感染を広げていない保証はどこにもない。
さらに、武漢から政府チャーター機第1便で帰国した日本人206人のうち、3人が新型コロナウイルスに罹患していたことが判明(症状のある50代男性と、無症状の40代男性、同50代女性)。これを元に単純計算すれば、封鎖直前の武漢から日本を訪れた人の1.5%がウイルスを持ち込んでいる可能性もある。
そうした状況を踏まえると、日本国内での感染の広がりを未然に防ぐことは、もはや現実的ではない。必要なのは、感染拡大を前提として、正しい知識を共有し、各自ができる限りの予防に努めることだ。
以下、これまでにわかっていること、そのうえですべきことをまとめておく。
コロナウイルス自体は珍しいウイルスではない
世界中が危機感を募らせているが、コロナウイルス自体は決して珍しいウイルスではない。年間を通じて流行する、一般的な風邪の原因ウイルスの約10~15%は、コロナウイルスである。「コロナ」とは、ギリシャ語で王冠を意味する。ウイルスを顕微鏡で見たときに、表面に突起が並び、王冠のように見えることから名づけられた。
ヒトの間で感染するコロナウイルスは、これまでに6種類の型が知られている。そのうち4種類は風邪の原因となり、あとの2つはいわゆるSARS(重症急性呼吸器症候群)とMERS(中東呼吸器症候群)だ。しかし今回の武漢発コロナウイルスは、そのいずれとも型が異なる。世界保健機関(WHO)ではこれを一時的に、「2019-nCoV」と命名した。すでにヒト-ヒトの4次感染が起きていると警告している。
では、この新型コロナウイルスは、どうやって生じたのだろうか?
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