中野 最近、セミナーとかで地方に出掛けると、話し終わった後に論戦をぶつけてくる人が増えているんですよ。まあ、いろいろな意見があるのはいいのですが、TPPがなかなか妥結しないのは米国の陰謀であると、まことしやかにおっしゃる方が増えている。これって、ちょっと気になりません?
おかしな方向に進んでいるTPP
藤野 そもそもTPPって中国包囲網だったはずですよね。環太平洋で自由な経済圏を作って、中国に独り勝ちさせないようにしようということでしたが、だんだんと話がおかしな方向に進んでいるような気がします。
日本側は米国に主導権を持っていかれてしまうというコンテクスト(文脈)で話をしているし、TPPを進めていこうとすると売国奴だみたいな話になるし、かつ中国がTPPに加入したいなどと言い始めていますしね。当初の狙いとはまったく異なる方向に進んでいる。政治的にも安倍首相がTPPに対して引きぎみですし、甘利さんが全面に出ざるをえなくなっている。上司がコミットしてくれない部下、というイメージですね。
渋澤 関税引き下げの件で引っ掛かっているとしたら、安倍首相が言う規制緩和や成長戦略が描き切れていないということかもしれません。関税引き下げについて聖域があるということは、そこに岩盤規制があるということですからね。でも藤野さんもさ、牛肉の関税38%が1%になるって言ったら、うれしいでしょ。
藤野 うれしい(笑)。
渋澤 僕もうれしい(笑)。でも妻に言わせると、現在の関税水準でも米牛肉は安くておいしいのに、1%の関税でさらに安くなったら、大丈夫かしらと不安になると言うんですよ。日本の食を守るとか、いろいろなことが言われていますけど、そこは消費者に判断を任せればいいんじゃないかな。
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