三宅:では、戸田さんにとって、リーダーのあるべき姿とはどんなものですか?
戸田:いろいろな形があるけど、僕は、いい仕事を持ってくることがリーダーのいちばん大事な役割だと思います。ある程度、持続する仕事で、その仕事をすることによってみんなが活性化し、それぞれが成長し、やってよかったと思える。そういう仕事を創ることが、リーダーには重要なことなのです。
三宅:部下に言うことをきいてもらうには、自分が成功し続けることが重要だと思います。戸田さんは最初に化粧品を立ち上げて成功されました。成功した分野に安住しようとする人も多いのですが、次に医療の分野に行こうというとき、怖さは感じませんでしたか?
オランダでの経験
戸田:僕はどの事業も成功とは思っていなくて、いつも途中にいると思っているのです。化粧品、サプリメント、医薬品、再生医療という流れで進めてきましたが、僕の中ではそれぞれがひとつの進化の過程です。だから最初から再生医療まで考えていました。富士フイルムという場で、ライフサイエンス分野の事業を新天地としてやっていく。そこには短期、中期、長期の設計図が必要だったのです。
三宅:その設計図はいつ頃から見え始めたのですか?
戸田:ボヤッとですけど、自分の頭の中に設計図が出来上がったのは、オランダの研究所長をやっている頃かな。もしかしたら、その前に種があったかもしれない。僕は入社して20年は日本にいて、カラーフィルムの開発と製造技術のエンジニアをやっていたのです。その延長でオランダに行って、ヨーロッパ向けのカラーフィルムを作っていました。
三宅:つまり、貿易摩擦で写真フィルムを現地生産することになったわけですね。
戸田:それでオランダで開発プロジェクトのリーダーをしているときに、初めて研究所を任されました。そのとき、プロダクトマネジメントだけではなく、リサーチマネジメントみたいなこともしなくてはならなくなったのです。今にして思うと、役職名を付けることが大事ですね。あ、オレ研究所長か、それでは研究所として何かコンセプトを出さないといけないな、と思ったのです。
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