春名風花さんへのSNS「罵倒」投稿に問われる罪 SNS上での名誉毀損に、どう対処すべきか

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ツイッターへの投稿によって人格権が侵害された場合、ツイッターとの任意交渉によって投稿が削除できることがあります。ツイッター社は、なりすましや嫌がらせなどの該当記事の削除に関して、ヘルプセンターからインターネット上の手続きを受け付けています(2020年1月20日時点では電話による削除要請はできないようです)。

この削除要請の際には、証拠をインターネット上で提出する必要があります(弁護士による代理手続きの場合には委任関係を示す資料も提出する必要があります)。

虚偽投稿に関し刑事罰が科されることも

ツイッター社による審査によって、当該アカウントがツイッターのルールに違反していると判断されるとアカウントの凍結などが行われます。この任意交渉は、上記法的手続きを行う前であっても、または並行してでもいつでも行うことができます。

春名風花さんや母親は、ツイッターへの虚偽内容の投稿について、刑事罰を求めることも考えられます。本件の場合、(具体的な投稿内容によりますが)(1)名誉毀損罪、侮辱罪、(2)偽計業務妨害罪、(3)脅迫罪などという犯罪が考えられます。

(1)名誉毀損罪、侮辱罪

名誉毀損罪は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と規定されており(刑法230条1項)、侮辱罪は「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する」と規定されています(刑法231条)。名誉毀損罪と侮辱罪の違いは、具体的な事実が示されているか否かにあります。

この記事においては、事実が示された前提で、名誉毀損罪について検討します。名誉毀損罪が成立するためには、①公然性、②事実の摘示、③名誉毀損、④事実の公共性、目的の公益性、事実の真実性の3つを満たすものでないことという4要件が必要です。

本件においては、ツイッターに書かれていて不特定または多数の人の目に触れるものであり(①公然性あり)、「彼女の両親自体が失敗作」などと投稿されていることから人格的価値を傷つけるものであると評価できる(③名誉毀損)と考えられます。

芸能人に関しての記事などにおいては、④事実の公共性について問題となることはあるものの、本件のような投稿については目的の公益性が認められることはないのではないかと考えられます。

以上のことから、本件投稿行為に関して名誉毀損罪が成立しえます。

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