震災から3年、漂い始めた停滞感 「もろさ」変わらぬ日本市場
円安依存の業績回復
国内企業の業績は、この3年で回復してきた。被災した部品工場などは復旧し、ズタズタに切り裂かれたサプライチェーンもほぼ元に戻った。2013年度は大企業で約6割の増益となる見通しで、トヨタ自動車<7203.T>など過去最高益を視界に入れる企業も多い。予想PER(株価収益率)は15倍台と、割高な水準まで海外勢の買いが日本株を押し上げているわけではない。
ただ、その増益分を稼いだのは円安によるところが大きい。昨年4月の日銀の「異次元緩和」も加わって、円安と株高が同時進行。ドル/円は震災直後の3月17日には76.25円まで下落。その後も80円を中心としたレンジ取引だったが、アベノミクス相場で急騰し、昨年末には105円台を付けた。しかし、貿易統計では、円安にもかかわらず輸出数量は伸びていないのが現状だ。
「稼ぐ力は自動車産業などでは戻ってきているが、ハイテクではむしろ落ちているようだ。政策面では、成長戦略や少子化・高齢化対策など肝心なところが進んでいない。見かけ上の景気回復ではなく、雇用や賃金など中身を伴わないと、国内投資家が本格的に動き出すのは難しいのではないか」と、しんきんアセットマネジメント投信・運用部長の藤原直樹氏は指摘する。
円債市場でも海外勢の存在感増すか
また、円安は良いことばかりではない。震災後、原発は稼働を停止し、火力発電所などへの負担が大きくなったことで、原油などエネルギー輸入が急増。円安は輸入価格を上昇させ、貿易赤字は昨年、過去最大の11兆円に膨らんだ。所得収支が食われるほどの巨額な貿易赤字となり、1月の経常赤字は過去最大の1兆5890億円となっている。
経常赤字は、日本がトータルで海外への支払いのためにドルなど外貨を調達しなければならなくなることを示す。資金フローの面で言えば、これまでは国内でまかなえていた国債の消化を海外に頼らなければならなくなるため、盤石だった国債市場にも「もろさ」が生じる可能性がある。
「中長期的には海外投資家の資金フローの流入がないと、円債市場がしっかりとサポートされないことを意味する。現状は日銀が異次元緩和で購入しているため、インパクトは日銀の方が大きいが、海外投資家の依存度が少しずつ大きくなってくるだろう」とJPモルガン証券・チーフ債券ストラテジストの山脇貴史氏は指摘する。