テレビドラマ「刑事・医療系が75%」の危険水域 いまだ変わらぬ視聴率至上主義の中高年シフト

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刑事・医療ドラマが多いのは今冬にはじまったことではなく、2010年代は何度か全体の約半数を占めることがあり、そのたびに「偏りすぎ」「食傷気味」という声があがっていました。しかし、今冬ほど極端に偏ったことはなく、それが2020年代の幕開けだったことに危機感を抱かざるをえません。

全体の75%に至った直接的な理由は、テレビ朝日以外のテレビ局で刑事・医療ドラマが増えたから。もともとテレビ朝日は刑事・医療ドラマが全体の80~90%を占めていましたが、今冬はテレビ朝日が3作/3作(100%)、フジテレビが2作/2作(100%)、NHKが2作/2作(100%)、テレビ東京が2作/2作(100%)、TBSが2作/3作(66%)、日本テレビが1作/2作(50%)という高比率になったことが原因なのです。 ※関西テレビは0作/1作(0%)、読売テレビは0作/1作(0%)

なかでも象徴的なのはフジテレビ。2010年代の低迷で少しでも視聴率を獲得したいだけに、一定の成果が期待できる刑事・医療ドラマの割合を高めているのです。ちなみに月9ドラマは7作連続で刑事・医療ドラマ(刑事事件を扱う1話完結の「SUITS/スーツ」を含む)が放送され、6作で2ケタ視聴率を獲得したことが、その裏付けとなっています。

さらに、本来は視聴率獲得の必然性が薄いNHKが2作/2作(100%)だったことに驚かされました。昨年、番組のネット同時配信や受信料徴収の是非が叫ばれる中、大河ドラマや朝ドラの視聴率が下がったことで危機感を抱き、一定の成果が期待できる刑事・医療ドラマに走ったとしても不思議ではありません。しかし、民放のテレビマンにしてみたら、「NHKまで刑事・医療ドラマで視聴率を狙うなんてひどい」という心境でしょう。

ともあれ、「ドラマの視聴率が大きく下がりはじめた2010年代に、各局がそれを打破すべく試行錯誤を続けた結果、2020年代の幕開けが刑事・医療ドラマが75%に偏ってしまった」という感は否めないのです。

高視聴率ドラマ「トップナイフ」の矛盾

日本テレビが中高年層の支持が厚い天海祐希さんを主演に据えた医療ドラマ「トップナイフ」を手がけることも見逃せません。

「日本テレビは2作/3作(50%)でいちばん低い割合じゃないか」と思うかもしれませんが、同局はスポンサーのニーズに応えて広告収入を得るために、コアターゲットをC層(4~12歳)、T層(13~19歳)、1層(20~34歳)、2層(35~49歳)に定め、一般的な視聴率にはとらわれず他局とは一線を画すドラマを制作してきました。

つまり、「中高年層向けの番組では、視聴率が取れてもスポンサーからの広告収入が得られないから、コアターゲットから外している」のです。

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