筆者のイチオシは、3位の商品だ。なめらかな口どけと砂糖不使用とは思えない風味で、1粒わずか糖質0.22g。1箱食べても5.6gとビックリの低糖質を実現している。小1の息子は「生クリームがウマイ~」と「糖質86%カットのショートケーキ」(280円税込)を気に入った。ほか、ピザやシュークリーム、エクレア、プリンなどにかく種類が豊富。糖質制限が必要な人にとって、おやつを諦めず、飽きずに楽しめるのはさぞうれしいことだろう。
すべて冷凍品なので、保存がきき、好きなときに食べられる点も支持されているという。シャトレーゼ全店(都心向け店舗は一部店舗)と自社通販で販売しているため、比較的入手しやすい点もリピートにつながっているようだ。
そして、通常商品と同様に、お財布に優しい価格も大きなポイント。だが、同社はなぜ、市場が大きいとはいえない糖質カットシリーズも含め、味にこだわった安価な商品を種類豊富に提供することができるのだろうか。
いいものを安く届けるための体制とは?
その答えは、独自のビジネスモデルにあった。山梨県に本社を置く同社はその立地を生かし、卵や牛乳、果物など菓子作りに必要な素材を地元の契約農家や農場から直接仕入れている。そして国内の自社工場で製造を行い、最短で翌日には全国の店舗へ自社配送。つまり、問屋を通さないため、新鮮な素材を使った商品を安く消費者へ届けられるのだ。
「ファームファクトリー」と呼ぶこの独自システムは1994年から始まった。「添加物を極力使わず素材にこだわる」というのも特徴だ。例えば、牛乳は、餌を厳選し高原で育てた牛の搾りたてを八ヶ岳の契約牧場から毎日仕入れ、低温殺菌を施し使用。卵も鶏の餌や飲み水にこだわり、近隣の契約農家より採卵から2日以内のものを毎日仕入れている。甲斐駒ヶ岳のふもとに白州工場を建てたのも、素材の味を邪魔しない水を使いたかったからだという。
また、割卵や精米など第1工程から自社加工を行う。例えばあんは、北海道産の小豆を白州の水で炊き上げ加工。しかも80種と菓子に合わせあんの味を変えているという。
糖質カットシリーズの「どらやき」は風味を出すためにこのあんの煮汁を使っているが、これも自社工場ならではの製法。「冷凍技術を含め製造設備を持っているため効率よく生産できる」と、保坂さんは味と価格を両立できるワケについて説明する。このほか、低価格実現のため、広告宣伝費は使わずに情報発信はHPやツイッター経由にとどめているという。
このように独自のリソースを生かし、アレルギー対応や糖質カットのようなニッチ市場にも注力する同社。おいしいものをお値打ちで、かつそれを“すべての人”に――ここをぶれずに追求してきたからこそ、長年多くの人から愛されてきたのだろう。
ニッチ領域の今後について保坂さんはこう語る。「餅の糖質カットは難しいですが、団子や大福など和菓子はぜひ増やしたい。また、例えばタンパク質の制限が必要な腎臓病の方など、今後も何らかの病気で食べられないものがある人のための商品を考えたい」。同社の挑戦は、続く。
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