こうした背景から主な購買層は患者を中心とする中高年だったが、前述の糖質制限ブームやSNSの普及でダイエッターの支持が急増。「チアリーディング活動のため体重を増やせない」という10代女子など、若年層にもファンが広がっている。「売り上げは、この10年間で10倍伸びました」と、研究開発課課長の保坂徹さんは話す。
人気の秘密は、やはり「おいしさ」にあるようだ。一般的に糖質オフ商品に味は期待できないイメージがあるが、同社の商品は、ネット上の声などを見ても味への評価が高い印象。「洋菓子から和菓子まで長年培った製造ノウハウが開発に生かされています」と、保坂さんは語る。
しかし、開発は簡単ではない。糖質カットは、糖質が多く含まれる砂糖や小麦粉をほかの素材に代替することが基本だ。同社では、砂糖の代わりに、体に吸収されにくく血糖値の上昇が緩やかとなる「エリスリトール」「マルチトール」などの糖アルコールや人工甘味料を使用。小麦粉は、食物繊維や大豆粉などに置き換える。ところが、おいしくなるベスト配合に出合うには試行錯誤が必要になる。
キッチンで成功したものが量産時につまずくことも。とくに口どけのよさやふっくら感を出すのが難しいという。
「第1号のまんじゅうは完成までに1年。ショートケーキは100回試作しました」と、保坂さん。「ライバルはシャトレーゼの通常商品。とにかく通常商品のおいしさに近づけようと日々取り組んでいます」。
品ぞろえのよさも人気の理由の1つだろう。当初は5商品だったが、ニーズが高まるにつれ数を増やし、現在は全16商品を展開。
大きく分けて2種類あり、1つは糖質70%以上カット(糖質2.6~5.6g)のもので、主に糖尿病患者を対象としている。もう1つは、糖質50%カット(糖質7.1~10.3g)のもので、ダイエット志向の人がターゲットだ(※カット率は日本食品標準成分表や同社従来品と比較しており、商品により比較対象は異なる)。
人気1位の商品は・・・?
売れ筋は、店舗・通販ともに、意外にもケーキではなく、1位が「糖質85%カットのテーブルパン6個入」(648円税込)。主食になるのでまとめ買いをする人が多いそう。糖質制限パンといえばふすま系の商品にガッカリした経験があるのでこれもバサッとしているかと思いきや、やわらかくて香りもよく意表をつかれた。「苦くなりがちなふすまは使わず食物繊維を多く使っています」と、保坂さん。サンドイッチにも適しており、売れるのに納得だ。
以下、2位は「糖質70%カットのアイス」(各432円税込)、3位は「糖質88%カットのとろけるショコラ 生チョコ風」(572円税込)。
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