熱々の鍋で三つどもえ、牛丼チェーンの思惑 先行する吉野家、すき家と松屋が追随

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吉野家では鍋メニューの投入に当たって、卓上コンロを使用するかどうかが議論になった。社内では安全面や時間を要する点がネックになるのではという慎重な意見もあった。

早くも人気メニューとなった吉野家の「牛すき鍋膳」

しかし、インパクトのある商品を提供したいとの安部修仁社長の思いは強く、昨年9月に固形燃料を使った卓上コンロを用いて鍋を提供することに決めた。

さらに、現在使用しているお膳の中におさめるため、新メニュー専用の鍋を特注して12月の発売に備えた。こだわりの施策が功を奏し、瞬く間に売り上げ拡大の牽引役になっている。

一方で、後追いとなったすき家の特徴はメニュー内容の充実。吉野家が「牛すき鍋膳」と「牛チゲ鍋膳」という2種類なのに対し、すき家は「牛すき鍋定食」、「とろ~りチーズカレー鍋定食」、「野菜たっぷり牛ちり鍋定食」という3種類を打ち出した。

すき家の強みはトッピング

「われわれの強みはトッピング商品の多さ。すき家だから提供できるトッピング牛丼を、今回の鍋メニューにも派生させた」(ゼンショーHD広報室)。おろしポン酢で食べる「野菜たっぷり牛ちり鍋定食」は女性を意識したメニューで、幅広い客層の取り込みを狙っている。

すき家はこれらを3月いっぱいの期間限定メニューとして販売しているが、「好調が続けば4月以降の発売もあり得る」(広報室)という。好評なメニューをあえて打ち切る理由もなく、鍋の具材や味を変えることで、継続的に鍋メニューを投入する可能性も十分考えられる。

 牛丼チェーン復活の兆しとなりつつある鍋メニュー。客単価上昇で業績改善にも貢献する商品だけに、各社とも力が入る。だが、冬から夏へと季節が変わるなかで、熱々の鍋メニューが売れ続けるかどうかは不透明だ。鍋で波に乗ったかに見える牛丼チェーンだが、それに続く「次の一手」が今年の戦いを左右しそうだ。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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