「中高年のメンタル不全は薬と休養で回復しやすいが、20代から30代前半の社員の場合は、会社(の仕事)に対する不適応なので対応が難しい」という。また「彼らは他罰的な姿勢なので、新たな職場に転勤させてもうまくいかない」と率直に語ってくれた。これは、「新型うつ」として議論されている問題だと思われる。
少し割り切った考えだと感じながらも、不適応と言われると、かつて人事の仕事を経験した私の実感からもうなずける点がある。ただ、当時はそれほど多くの対象者はいなかったが、今はどの会社も苦労しているようだ。
彼の言葉を私なりに解釈すると、若い頃のメンタル不全は、前半戦の通過儀礼を乗り越えるのに苦労している状態であるのに対して、中高年のメンタル不全は、後半戦の通過儀礼のところでつまずいているのではないだろうか?
そう考えると、若手社員のメンタル不全に必要なのは、薬や休養ではなくて、成長や成熟に対して手助けすることだと言えそうだ。また中高年の場合には、いったん組織に適応した経験があるので、薬や休養が有効なのであろう。ただ、薬や休養で元に戻るだけでは、後半戦の課題を乗り切るのは難しいと思われる。
通過儀礼を乗り切るためには、時間軸が必要
前半戦と後半戦では、求められる通過儀礼が異なるので、それに応じて社員の側が変化しなければならない。こういうときには、「他人は変えることはできないが、自分は変えることはできる」といったたぐいのことがよく言われる。しかし、自分を変えることは至難の業である。持って生まれた性格や個性は、いくら変えようと思っても変えられない。モノのように単純に自分を操作するわけにもいかないのである。
変えることができるのは、自分自身ではなくて、自分と他者(上司、同僚、顧客)との関係、および自分と組織との「関係」なのである。先ほどの2つの通過儀礼も、自分と仕事仲間や組織との関係の問題であることに気づくであろう。
サラリーマンは、自分が変わるということを安易に考える傾向がある。頭の中で物事を考えているからだ。「心機一転、生まれ変わった気持ちで明日から出直します」という宣言を、組織の中で数えきれないほど聞いた。しかし、そう言った本人が変わった例を私は知らない。
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