プレスバターサンドが「人気菓子」となったワケ すべてが「逆張り」のブランドコンセプト

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プレスバターサンドの立ち上げ時にはストア運営責任者だったという、BAKE副社長の近藤章由氏(筆者撮影)

2019年12月26日には新ブランドも加わった。「送る・贈る」という行為をコンセプトに据えた、その名も「POSTBOX SAND COOKIE」だ。

薄焼きのクッキー生地にチョコレートを挟んだスイーツで、弾力のある生地に上下から熱と圧力を加えた「薄焼き製法」によって制作。プレスバターサンドの製法をヒントに開発されたという。

なぜこのような手間をかけているかというと、このクッキーがポストに投函されることを前提としているためだ。

「配送時にクッキーが割れないような工夫をする必要がありました」(近藤氏)

期間限定のポップアップストアを国内に順次展開。スタートは都内主要駅6カ所にて、12月末〜1月中旬に展開された。年末年始の贈答の多い期間だったこともあり、「送る・贈る」をコンセプトとしたギフト菓子への反響は大きかったようだ。

次回以降は、新宿のルミネエスト(1月31日〜2月16日)、池袋の東武百貨店(1月31日〜2月14日)の2カ所で展開する。

テイストは現時点では、ミルククリーム、宇治抹茶、チョコレートの3種類だが、今後はショップの立地に合わせ、地域性を取り入れたテイストを加えていく予定だ。

「ご当地の味」は希少価値を高め、しかも「すべての味をコンプリートしたい」というコレクター意識を刺激するため、本拠地・地域のそれぞれで売り上げの相乗効果をもたらす作戦だ。

スイーツを食べるという体験には観光のワクワク感、そして、限定スイーツがあるということで、地域の魅力をも向上してくれる。

しかし種類を増やし、しかも地域ごとに異なる味となると、オペレーションが複雑になるように思える。

「クリームの部分は地元の企業にサポートいただく予定です。BAKEは東京の企業ですが、地域で愛される食材を使い、一緒になって地域を元気にしていきたいという思いがあります」(近藤氏)

「モノづくりを通じ、菓子業界を革新していきたい」

老舗洋菓子店の2代目である長沼真太郎氏が創業以来、「お菓子のスタートアップ」を目指し、革新的な手法を実行してきた同社。第1の目標としてきた上場に向けては道半ばといったところだ。

「菓子業界はもともと保守的な業界で、工場などの設備投資も大きいため、小さな会社が成功するのは難しいところがあります。その中で当社は、インパクトを与えるモノづくりを通じ、業界を革新していきたいと考えています。BAKEらしさを失わず、迷わずチャレンジしていきます」(近藤氏)

箱状のクッキー2枚でサンドした革新的な形状は、中身がはみ出ないようにと考案されたもの。独特の食感を生み出している(写真:BAKE)

そのための課題となるのが、規模の拡大につれ、目標の共有が難しくなること。今、BAKEの体制は社員、パートアルバイトを含め1500人弱にまで拡大している。BAKEでは、内外に向けたオウンドメディアにより、自社やブランド、飲食業界の情報を発信し、思いの共有を図っている。

そしてプレスバターサンドは、そんなBAKEの成長戦略において、突破口を開く存在と言えるだろう。今後は海外展開に打って出る予定で、台湾をまずその足がかりとする。1月10日から51日間、ポップアップストアを展開している。将来的には、アジア各地のご当地味プレスバターサンドが味わえる日が来るかもしれない。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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