動画・SNS「見放題」、消えない公平性への懸念 総務省策定のガイドラインになお残る穴

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auでも選定基準は非公表としているが、この「フラットプラン7プラスN」については「人気のSNSのデータ消費はゼロ!」と宣伝しており、「動画見放題」とはしていない。auの広報担当者は「フラットプラン7プラスNはSNSを多く使う方向けという仕様にしてある。動画を多く見る方には、データ使用量の無制限プランを用意している」と話す。

つまり、auは自社の戦略に合わせて区切ったカテゴリー分けによって、この「フラットプラン7プラスN」で何をゼロレーティングの対象にするかを意図的に決めていることになる。

動画もSNSもニュースも、すべてライバル関係

ガイドライン案では、このように通信事業者側の都合で「特定のカテゴリー」だけをゼロレーティングの対象にすることへの是非については踏み込んでいない。文面に書いてあるのは、あくまでも「同一のカテゴリー」の中のコンテンツ同士を平等に扱う義務だけだ。

だが、カテゴリー内の競争バランスに配慮すればコンテンツ間の公平性が確保されるのかと言えば、話はそう単純ではない。

そもそも競争は、同じカテゴリー内だけで起きているものではないからだ。通信業界に詳しいMM総研の横田英明常務は「スマホの画面を見る時間の奪い合いという意味では、動画もSNSもニュースも、すべてがライバル関係にある」と話す。

さらに、SNSのツイッターやインスタなどにも動画が頻繁に流れているように、コンテンツのカテゴリーの境目はあいまいな部分もある。

こうした懸念について総務省データ通信課の担当者は、「課題は認識しているが、コンテンツのあり方は複雑化しており、どこまでを不平等な扱いとするかの線引きは難しい」としたうえで、「競争上の懸念が生じれば調査を行いたい」と述べるにとどまった。

今年4月からは、大容量や超高速の特徴を持つ5Gが商用化され、SNSやニュースなどのコンテンツでもデータ通信量を多く消費する動画の活用がより盛んになることが見込まれる。ゼロレーティングの持つ意味も一層大きくなり、今後も新たなプランが出てくる可能性がありそうだ。

横田氏は「規制のしすぎは望ましくはない」と前置きしつつも、「5G時代にコンテンツの重要性がより高まることも踏まえ、競争環境はよりフェアにしていかなければならない。一層の枠組みづくりが必要なのではないか」と指摘する。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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