政府は2019年9月のデジタル・ガバメント閣僚会議で、マイナンバーカードの健康保険証を医療機関等で利用できるようにするスケジュールを決めている。保険者が発行する健康保険証をマイナンバーカードに組み込むのは難しくないが、それを医療機関で読み取れるようにするためには、医療機関に端末やシステムを導入してもらわないといけない。2021年3月末までにマイナンバーカードの健康保険証利用の本格運用を始め、医療機関等の6割程度でのその導入を目指す。
2021年10月にはマイナポータルで患者が用いた薬剤情報の閲覧を開始し、2022年3月末までには医療機関等の9割程度、2023年3月末までにはおおむねすべての医療機関等への導入を目指す。
75歳以上の患者負担はどうなるのか
その第1弾として、マイナンバーカードに組み込まれた健康保険証の読み取り端末やシステムを医療機関が導入することを支援する予算が2020年度予算に盛り込まれた。政府が予算を出して、マイナンバーカードへの健康保険証の組み込みを早期に実現させることにコミットした形だ。
ちなみに、2019年末に注目されていた75歳以上の患者負担については、2019年末の全世代型社会保障検討会議の中間報告で、一定以上の所得がある75歳以上の人は2022年度から全員2割負担(一斉引き上げ方式)とすることで決着した。経済界などからも提案されていた、今後75歳になる人から順次、原則として2割負担とする案(学年進行方式)は採用されなかった。
「全世代型社会保障、今後何を議論すべきか」で詳述したように、75歳以上の高齢者にもより多くの負担を負ってもらえれば、現役世代の保険料負担や税負担が軽減され、世代間の負担の公平に資するとの観点からのものだ。
では、一斉引き上げ方式と学年進行方式と、どちらが現役世代にとってよいものだったのか。それは学年進行方式である。一斉引き上げ方式の移行初年度である2022年度は、今まで1割負担だった75歳以上の一定以上所得者が2割負担になるため、患者負担を多くしてもらう分、現役世代の負担が軽減される効果は学年進行方式より大きい。
しかし、学年進行方式は、1947年以降に生まれた人は所得にかかわらず75歳以上原則2割とする仕組みである。したがって、移行後10年も経てば、75歳以上の人はほぼ全員が2割負担となる。しかし、一斉引き上げ方式では、10年経っても一定以下の所得の後期高齢者は引き続き1割負担のままである。今回は一斉引き上げ方式が採用されたため、現役世代の負担軽減効果は小さいものになってしまった。ただ、この75歳以上の患者負担の議論は2022年度からなので、2020年度予算案とは関係がない。
このように、2020年度予算案は、歳出改革の目安を実現し、消費増税で得た財源を社会保障の充実に充てるという、当初の目論見通りの内容だったものの、全世代型社会保障改革には課題を残したものだったといえよう。
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