中東情勢緊迫で2020年は金が一段と上昇する

これから安全資産への需要はますます高まる

自国軍の司令官を殺害されたイランも、もちろん黙ってそれを受け入れるわけにはいかない。ソレイマニ司令官が国民的英雄であったこともあり、今後報復行動に出るのは不可避だった。「殺害後3日間は喪に服する」としていたが、それが明けた8日には早速イラクの米軍基地に10発以上のミサイルを撃ち込むという攻撃に打って出た。今後もこうした攻撃が続く可能性は極めて高いし、アメリカは当然ながらそれに対して反撃を加えることになる。両国ともに後に引くに引けない状況に陥ってしまう中、短期的には状況はかなりエスカレートすることになりそうだ。

もっとも、このまま一気に両国の全面的な軍事衝突にまで事態が進展するのかと言えば、その可能性は低い。イランは対面を非常に重んじる国である一方で、現実的な考えに基づいた行動を取る国でもある。軍事力に圧倒的な差があるアメリカと戦争を行えば、壊滅的な打撃を被るのは目に見えている。

それだけに、深刻な事態に発展するのを極力避けながら、小規模な報復行動を繰り返すことになるのではないか。具体的にはアメリカ国内や世界の同国の関連施設、要人に対するテロ攻撃、サイバーテロ、サウジの石油施設やホルムズ海峡の封鎖といった、石油供給を深刻な不安を生じさせる行動などが挙げられよう。

一方のアメリカも、巨額の財政支出を強いられる大規模な軍事行動は、できる限り避けたいというのが本音だろう。もちろん、小競り合いが徐々にエスカレートし、最終的には制御不能となって全面戦争に突入していく可能性も考えられるが、少なくとも短期的にはそのリスクは低いと見て良いのではないか。ただし、秋の大統領選挙で有利に働くと見て、トランプ大統領が強引に戦争までもっていくというシナリオには、注意が必要かもしれない。

小規模でも「テロ頻発」なら、安全資産への需要は高まる

マーケットにとってみれば、小規模衝突が頻発するというパターンが一番厄介だろう。両国が真っ向から衝突すれな、比較的短期間でアメリカが勝利、それで材料が全て出尽くしとなる可能性は高い。もし一時的に大混乱に陥ったとしても、その後比較的短期間で回復することも十分にあり得るところだ。しかしながら、テロ攻撃が次々に起こるような事態となれば、その度に市場の不安が高まり、リスク回避の動きが加速することになる。次に何が起こるかわからないという漠然とした不安は、株式市場の調整を促し、アメリカ債や金、円といった安全資産に対する需要を高める可能性は高いのではないか。

今回の中東情勢緊迫に対する懸念の高まりは、その全てが市場にとってマイナスに作用するわけではない。特に今回の事態を受けてFRBが再び緩和的な方向に政策方針を傾ける可能性が高まってきたことは、市場の不安と裏腹に、リスク資産を押し上げるような展開になることも、十分にあり得ると考えておくべきだ。

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