中東情勢緊迫で2020年は金が一段と上昇する これから安全資産への需要はますます高まる

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2020年は金が一段と上昇するかもしれない(写真:穂積栄治 / PIXTA)

2020年は、年明け早々の3日にアメリカがバグダッド国際空港近くで空爆を行い、イラン革命防衛隊司令官を殺害したことを受け、波乱の幕開けとなった。ちょうど1年前の「2019年の幕開け」は、5日にFRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長が金融政策の方針変更を示唆、それまで弱気一色の相場が利上げ停止期待が高まる中で一気に強気に転換する格好となった。今年は逆に流れが弱気に転じ、今後はリスク回避の動きが加速する可能性が高いと見ておいた方が良さそうだ。

殺害実行の決断は、想定外のシナリオだった可能性

今回の殺害に関しては、昨年12月27日にイラク北部で米軍がロケット攻撃を受けて民間人1名が死亡、米軍兵士4名が負傷したことが発端となっているようだ。アメリカ国防総省が事態を受け、対応策の選択肢の一つとしてガセム・ソレイマニ司令官の殺害を提示したという。

同省は歴代の大統領に対しても、もっとも極端で、非現実な選択肢を一つ提示することで、他の現実的な作戦を受け入れやすくする方針をとっており、今回もドナルド・トランプ大統領がこれを選択することは想定していなかったとも言われる。大統領もいったんはこの提案は拒否したものの、その後バグダッドの米大使館が親イラン派の抗議行動によって襲撃される映像を見て怒り心頭となり、一転して殺害を決断したという。真偽のほどは定かではないが、いかにもトランプ大統領らしい行動だったと言うこともできるだろう。

今回の殺害はイランという独立国の正規軍幹部を直接標的にしたという点で、極めて異例な事態だ。ソレイマニ司令官率いるコッズ部隊は、世界各地でテロ組織の支援を行っていたとも言われ 「殺害は当然」との意見もある。

だが、その後の政治的、軍事的な影響を考えれば、例えばオバマ政権の時にアル・カイーダのオサマ・ビン・ラディンを殺害したことなどとは雲泥の差があるのではないか。トランプ大統領はテレビを見て衝動的に殺害を決断したのかもしれないが、最高司令官の命令を受けて、米軍がそれを実行に移したのは紛れもない事実だ。今後米政府は何が何でも今回の作戦を正当化しようとするだろうし、そのため既成事実づくりや理由付けのために、新たな作戦を仕掛けることも十分にあり得ると見ておくべきだ。

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