サイバー藤田社長「あわや解任」の想定外事態 株主総会での賛成率が異例の低さに

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藤田社長はCA8廃止時に自身のブログで、制度についてこう振り返っている。「役員のポストが安泰ではなくなったことで、みんな非常によく働くようになった。当初の狙いだった次のポストを狙う層にも十分な活性化につながったと思う」。2年ごとに交代するという取り決めが、役員を鼓舞したというわけだ。

ただ藤田社長はブログに、「制度の限界」を感じていたことも記していた。ネット広告などの中核事業、財務、人事などの責任者は在任期間が長く、「中枢のポストではそう簡単に人の入れ替えが効かない」。2年に1度、2人を交代させようとすると、限られた枠の中で交代させなければならず、本来育成すべき若手役員をすぐ交代させるという事態になっていた。

取締役はしばらく増える方針だった

その結果、今後6年程度は取締役の数を増やす方針に転換。藤田社長は、それまでと同様に若手を抜擢しつつ、「役員会の人数が多すぎるという状態になった時点で、持ち株会社と事業会社に分けて絞り込むのか、単純に数を絞り込むのかを検討する」としていた。

現在の体制の中で社外取締役を3分の1以上にしようとすると、①社外取締役をあと3人増やして取締役を計18人にする、②社外取締役の人数はそのままにして、社内取締役を一気に6人減らす、といったことが考えられる。①を選択すれば取締役会が過剰に膨らみ、②では藤田社長自身が掲げた方針に逆行する。

IR担当者は、「取締役の数を増やすという判断は、(社外取締役の比率に関して)時流がここまで明確になる前に下したものだった」と語る。会社側も社外取締役の増員を求める動きは認識し、昨年12月の株主総会に向けて増員を検討していたが、人選が定まらなかった。「取締役会の母数をどうコントロールするかは今後検討を進めたい」(同)。

1998年の創業以来一貫して会社の舵取りを担ってきた藤田社長は、思わぬ「NO」を突き付けられた。注力事業のインターネットテレビ局「AbemaTV」に巨額投資を続ける中で、収益柱であるネット広告やスマートフォンゲームの事業は以前ほどの成長力が見られない。創業社長が突如解任されるような事態になれば、混乱は必至だ。

自社の戦略とコーポレートガバナンスをどう両立させるか。多岐にわたるステークホルダーとの関係づくりの難しさが浮き彫りになったといえる。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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