「シリコンバレーの時代は終わった」と言える訳 米西海岸だけが先端技術の場所じゃない

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ワーレー:ネットワークの価値はつながることだけにあるわけではなく、結果として起こるアクションにあります。たとえ、数千のつながり(コネ)があったとしても、結果が伴わなければ、結局そのネットワークには価値がないというのが私の意見です。

シリコンバレーやNYを見ただけで「ネットワークの豊富なエコシステムがある」と考えるのは、起業家や投資家にとって思い込みです。ネットワークは人間関係なので、それ自体も時を経るごとに変わります。50年前には「デジタルネットワーク」というものは存在しませんでしたが、今日ではクリエーティブやエンジニアなどの即席のネットワークを作ることのできる多数のツールがあります。

大きく変わるスタートアップのエコシステム

渋澤:つながっているという意味では、世界のどこからでも可能ですからね。要は、それが活用できるかがポイントなのですね。

ワーレー:そのとおりです。例えば、2018年には「アメリカに帰ったら、あるVCに会って自社の資金調達ラウンドに参加してもらおう」と思っていたのですが、なんと、そのVCのトップが私とまったく同じタイミングで東京にいることが、東京の知り合いのツテで判明して、ここで会えました。

これはネットワーキングとコミュニケーションが進歩している非常によい例です。20年前だったら、彼らが同じ都市のどこにいるのか見当もつかず、会うためにはさらに数週間はかかっていたかもしれません。

渋澤:シリコンバレーのベンチャー投資のエコシステムは依然健在であるものの、実はベンチャー投資のエコシステムはすでにかなり分散型になっていて、世界でいろいろなベンチャー投資のハブができているということですね。

ワーレー:「美は見る人の目の中にある」とはよく言ったものですね。起業家にとってのシリコンバレーは、俳優にとってのハリウッドと同じです。数百万人の人間が移住しても実際は数人ほどしか成功しないような構図です。

しかしながら、起業の実態は大分異なります。例えば、私の息子は21歳で起業して2人の正社員しか持たず、コアの仕事以外はすべてアウトソーシングしています。しかも、ノートパソコンすら持たず、iPhoneですべての経営を行っています。最近何かに書かれていましたがセールスフォース社の創業者兼CEOであるマーク・ベニオフ氏も、そうしているようです。

IEEEの起業家のプログラムでも多くの学生がiPhoneからピッチを行っています。時には、プログラムを大学の端末から行っていて、PCにすら初期投資をかけていないこともありますね。

渋澤:日本でもベンチャー投資のエコシステムをつくるべきだという議論が長年繰り返されていますね。日本についてどう感じていますか?

ワーレー:日本にはまださほど訪れていないので非常に臆測的ですが、2つの重要なことを学びました。1つは日本の投資家は長期的な視点を持っているということです。

シリコンバレーでは5年、10年で考えるところを、日本では20年、30年のスパンで考えています。2つ目の学びは、日本の投資家はお金を稼ぐことだけを投資の目的としていなく、学びや他事業にとって有用な情報ソースを得られるのであれば、一定程度は許容できる「勝ち」としています。

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