「シリコンバレーの時代は終わった」と言える訳

米西海岸だけが先端技術の場所じゃない

ワーレー:はい、確かに30年前はそのとおりでした。しかし、今やオースティンは車の移動時間で行けば、半径3時間ほどの距離に、アメリカのトップ10都市のうち、なんと4都市が入るという好立地になっているのです。

渋澤:アップル社のCEOであるティム・クック氏が「才能、創造性、画期的アイデアは地理的場所に限定されない」と述べたように、アップルは「アメリカ全土でハイテク産業や職場を開拓するというコミットメントを強める」と述べつつ、10億ドルを投じてオースティンに新たなキャンパスを建設中(2022年完成予定)ですね。

シリコンバレーで起業する必要性が昔より小さくなった

ワーレー:また、2000年代のベンチャーといえば、近くのデータセンターに実際にラック(棚)を所有していなければなりませんでした。でも、今日はクラウドや、クラウドベースサービスの普及のお陰でどんなインフラも自前で持つ必要がなくなりました。すべて分散化されてきています。

「本当にシリコンバレーの時代は終わったのか?」渋澤氏は率直にワーレー氏に聞く(撮影:尾形文繁)

渋澤:インフラが分散されているから特定の場所に限定される理由がなくなっている理由は確かに大きいですね。でも、資本の関係はどうでしょうか?

ワーレー:ビジネスには特性上どうしても資本集約的なものもあります。しかし、例えばハードウェア産業において、近年は中国が実験のコストを大幅に下げてくれています。また、多くのイノベーティブなスタートアップが存在しています。

私のファンドであるEcliptic Capitalの投資先に、Patcherという会社があるのですが、彼らは量産しない1回限りの回路設計を含めて電子回路基板設計を簡単に行えるオンラインソフトウェアを提供しています。

これは素早いプロトタイピングにはすばらしいサービスです。かつてはエンジニアを雇う必要がありましたが、もはや必要ないわけです。これはテクノロジーがそれ自体を使いやすくしている、あまたある例の1つでしょう。さらにアップル、グーグルやその他企業も、クレジットや支払オプションという形で、スタートアップ(ベンチャー企業)に優遇措置を提供しています。

渋澤:ということは、資本というベンチャーの参入障壁が格段に下がっているので、必ずしもシリコンバレーで起業する必要がないということですね。

ワーレー:はい、そうです。ほかにも考慮に入れるべき要素があります。過去6年のシードステージ(起業準備段階)のベンチャー投資は、投資額は上がる一方で、投資の数自体は減っているという傾向があります。

また、かつてはシリコンバレーのVC(ベンチャーキャピタル)の多くは、投資の条件にシリコンバレーへ拠点を移すことを持ち出したのですが、今やそんなことは言いません。

それどころか、多くのVC企業は、シリコンバレーに限らずアメリカの主要地域の「外」に投資していく方針に完全にシフトしています。こうした動きがアメリカで広まるにしたがって、従来のVC企業がEU、インド、中国と、アメリカの外へ進出していくのを目にしてきました。

渋澤:しかし、シリコンバレーの人的ネットワークには相当の価値がありそうですが……。

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