「シリコンバレーの時代は終わった」と言える訳

米西海岸だけが先端技術の場所じゃない

量子コンピューティングの世界で最先端を行く連続起業家のウィリアム・ハーレー氏は「シリコンバレーの時代は終わった」という(写真:筆者提供)
次世代型コンピューターと言われる量子コンピューティングの事業化に取り組んでいるアメリカの著名連続起業家であるウィリアム・ハーレー氏。同氏は「シリコンバレーの時代は終わった」と断言する。それはどういうことなのか。前編に続き、コモンズ投信会長の渋澤健氏が聞く。
前編:「量子コンピューター」で世界はどう変わるのか

「中央集権的な世界」は終わりを告げようとしている

 渋澤健(以下、渋澤):ワーレーさんは「シリコンバレーの時代はもう終わった」というコメントを最近あちこちでされているようですね。ほとんどの日本人はシリコンバレーが先端技術のベンチャー投資のメッカと思っているのでとても印象に残りました。

ウィリアム・ハーレー(以下、通称のワーレーで):私たちの会社にお金を出してくれる投資家は主にシリコンバレーにいるのでこれは慎重に言わなければならないトピックなのですが、ひとことで言えば「世界が変わった」ということです。つまり、中央集権システムは終わりを告げており、経済大国の座も、私はアメリカから中国に移ったと思っています。また、ロジスティクス(物流)も大きく変わっています。

渋澤:物流がシリコンバレーと関係あるのですか?

ワーレー:例えば、私が子どもの頃の楽しみの1つと言えば、食べ終わったシリアルフードの箱に掲載されている商品コードを切り取って集めて、ちょっとした電子機器と交換することでした。

当時は、郵便局に行って投函してからそれらが届くのに8週間も待っていました。これがその時代の技術でした。それが今、クレジットカードを取り出してアマゾン・プライムで買い物をしたり、サービスをセットアップすれば、数時間でビジネスに必要な物資やサービスをすべて準備できてしまうわけです。

渋澤:どんな場所でも、そこに必要な物が届く世の中になったという「リアル」が重要だというわけですね。

ワーレー:そうです。確かにシリコンバレーは、集まる情報の密度という点ではまだまだ大きな価値を持っています。ただ、それで言えばシリコンアレー(NY)、あるいは東海岸の大学都市、イスラエルのテルアビブ、日本、ドイツだって同様です。

私はIEEE(アメリカ電気電子学会)という組織で起業家育成の副委員長をしているのですが、CESPと呼ばれるスイスのCERN(欧州原子核研究機構)を拠点としたe-起業家学生育成プログラムの立ち上げに携わり、2019年は15人の学生を連れていきました。

これらも密度という観点では同様に価値があるわけです。加えて、テクノロジーは仮想のコミュニティーを築くことを可能とするので、あるとき突然イノベーションが分散されていることに気づくわけです。

例えば、WordPressを開発・運営している会社であるAutomatticはアメリカのサンフランシスコに本拠を置いていましたが、今は所在地がありません。本社はなく、デジタルに協業している従業員が世界中にいるだけです。

渋澤:ワーレーさんはテキサス州のオースティンにお住まいですね。私も大学時代に暮らしていたところです。とても住み心地がよいところですが、1980年代の前半ではテクノロジーのハブ(結節点)というイメージはまったくありませんでした。

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