JALへ最後の執刀、難題山積の深い病巣

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 管轄の厚生労働省によると「これまで給付減額が認められたケースは数件程度」という。NTTでは給付減額の認可が出ず、国を相手取って提訴。一審、二審とも敗訴し、現在最高裁で係争中。仮に減額が認められたとしても、希望者には給付相当額を一時金として支給する必要があり、多額のキャッシュアウトが生じる。タスクフォースでも「年金は(減額が難しい)法律自体が悪い」という始末だ。まず積み立て不足を1000億円程度まで減らしたい意向だが、新たな法改正などがないかぎり、ほとんどお手上げ状態に近い。

大手企業でも年金積み立て不足を抱えており、持続的な成長を軸に資本を強化することで、財務基盤の安定を図っている。JALの場合、基盤作りが十分でなかったため、昨年来の世界不況が決定打となり、危機のバロメーターがハネ上がった。

ライバルの窮地を尻目に公募増資で財務基盤を向上させ、攻勢に出る全日本空輸(ANA)を見比べ、ある市場関係者はJALを「末期のダイエーとうり二つ」と言う。当時、資金繰りが悪化していたダイエーは既存店の改修でその場しのぎを試みたが、イオンやイトーヨーカ堂などの出店攻勢で失速したからだ。

JALとANAの雌雄を決した要因は約10年前までさかのぼる。経済のグローバル化でJALが主力とする国際線は右肩上がりで推移してきたが、2001年に米同時多発テロが発生し失速。前年割れとなったのは1990年の湾岸戦争以来だった。ここでANAは市場拡大を前提とした従来の常識を思い切って否定する。大型機から燃費のよい中・小型機へのダウンサイジングを加速し、運航路線も中国を中心としたアジア圏内に絞った。航空連合「スターアライアンス」との提携効果を生かした共同運航でコスト削減を図り、身の丈に合う経営へ転換を図っていく。

一方、JALは違った。国際線は伸びるとの前提に立ち、世界屈指の保有機数を誇る「ボーイング747」(通称ジャンボ)など大型機を飛ばし続けた。02年には日本エアシステム(JAS)との経営統合で規模拡大を追求し、燃費の悪い機材は一段と増加。また、独自路線の拡張にこだわり、航空連合「ワンワールド」加盟が遅れたことも響いた。結局、イラク戦争や新型肺炎(SARS)などで国際線は前年割れが続き、目算に大きな狂いが生じた。

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