JALへ最後の執刀、難題山積の深い病巣
「今後、路線リストラで航空機を市場で売る場合、半値になるだろう。多額の売却損もしくは評価損を計上せざるをえない」(大手証券アナリスト)。ANAも同じ手法を使っていたが、ホテル売却で特別利益を計上した07年度に、合わせて航空機減損を吐き出し、“負の遺産”を一気に処理してメドをつけた。
JALが身の丈に合う機材縮小を本気で進めれば、かつてのツケ(含み損)がたちまち顕在化する。09年6月末の自己資本は約1600億円。タスクフォースの試算では、09年度の営業赤字は約2000億円(会社計画は590億円の赤字)に膨らむ見通しで、大規模な金融支援は欠かせないパーツとなる。
その対策として挙がっていたのが、私的整理の一つである事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)や産業再生機構の後継に位置づけられる企業再生支援機構の存在だった。
事業再生ADRは昨年から始まった新制度で、第三者機関が事業者と債権者の仲介をするため、債権カットなどの調整が図りやすいとされる。ただ、再建計画の実行には、すべての債権者の合意が必要になるためハードルが高く、一部の下位行は難色を示す。背景には、海外での航空機購入に活用される国際協力銀行保証(JBIC保証)のつく融資が中心だからだ。JBIC保証残高は約1000億円に上り、「事業再生ADRによる債権放棄の場合、保証がどうなるか不明。一方、法的整理となればJBIC保証がきくので損失がない」(下位行関係者)という。
タスクフォースの中間報告には、「11月18日以降、事業再生ADR手続等の利用」と明記されている。ほかにも人員削減や子会社売却、路線の撤退・減便など事業の縮小均衡を再建策の柱に掲げる。しかし、こうした案は「(9月解散した)有識者会議とJALとの話し合いで計画していたリストラや今後のスケジュールに毛が生えた程度」(有識者会議の元メンバー)。リストラに程度の差があっても、過剰債務企業に対する処方箋にウルトラCはないという証左だろう。
前政権下では6月にJALに対し、メイン行である政策投資銀行に政府保証をつけ、準メイン行と合わせて1000億円規模の協調融資を実施した。その際、年内にさらに1000億円の融資を取り付けるため、9月末までにJALが具体的な再建計画をまとめる予定だった。