JALへ最後の執刀、難題山積の深い病巣

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 だが、折衝はなかなか進展を見ない。痛みを強いるタスクフォースに対し、金融機関からは「そもそも法的な位置づけは何なのか」と、その権限に疑問が呈された。さらに本業のリストラや減損の中身など、再建計画の実効性をめぐり、詳細かつ膨大な質疑がなされたが、「ボール(質問)を投げているのだが、十分な説明が来ていない」(大手行幹部)と距離は埋まらず。骨子策定の期限としていた10月末が迫っても、主力行の態度が軟化する様子は見られなかった。

事業継続に向け、11月中のつなぎ融資が喫緊の課題で、切迫度合いはいっそう高まる。法的整理を回避するならば、最終的には公的融資か出資で救うしかない。前原国交相はかねて「自主再建は可能」としていたが、一時的に実質国有化を選択する可能性が出てきた。9月下旬のタスクフォース立ち上げ時、国交省の発表で「事業再生の成否は公益、国益に関わる」と記された。だが、税金投入となれば事態は複雑で、年金問題の解消が避けて通れない。

JALは現時点で、将来支払う必要がある退職金と年金の合計で約8000億円もの巨額の退職給付債務を抱えており、年金資産で補えていない積み立て不足(未認識債務)も約3300億円ほどある。

大和総研の試算によると、退職給付債務を自己資本で除した割合は、JALの場合459%と国内企業で最悪。「経営破綻した米GMは長年400%を超える水準が続くなど最悪だった。JALはそれと変わらない」(深澤寛晴シニアアナリスト)。JALと同程度の退職給付債務があるソニーは31%、JR東日本は39%、三菱重工は56%と、大手の中でJALの財務脆弱性は際立つ。これにメスを入れて大幅減額できなければ、「巨額の金融支援が(事業資金ではなく)年金負担に回る」(主力行幹部)とのそしりを免れない。

体力低下を招いた10年前の判断ミス

JALも課題を十分に認識しており、今年5月の決算発表時には年金債務減額の方針を打ち出した。ただ減額へのハードルは相当高い。確定給付企業年金法では「母体企業の経営状態が悪化している場合」を要件にしているうえ、年金受給者等の3分の2以上の同意が必要になる。JALの場合、現役社員が約1万7000人いるほか、受給者・待機者のOBは約9000人と規模が大きい。特に給付水準の引き下げが日々の生活に直結するOBらは猛反発しており、ホームページ上で募っている反対署名も全体の4割を超した。

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