小林武史「生きる実感を得るためにできること」 音楽プロデューサーが本気で挑む第二の活動

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音楽プロデューサーである小林武史さんが、いま農場経営を本格化させる理由とは?(撮影:梅谷秀司)
2019年9月、スウェーデンの16歳の少女・グレタさんが国連気候行動サミットで行った怒りのスピーチが全世界で話題になった。地球規模で進行する環境破壊、その影響で広がる異常気象。今年、大雨や台風の甚大な被害を受けた日本でも、例年以上に危機感を持った人が多かったのではないだろうか。
こうした環境問題の深刻化を危惧して、20年前から、持続可能な社会に向けた取り組みを本気で続けている日本人がいる。サザンオールスターズやMr.Childrenなどのプロデュースを手がけてきた小林武史さんだ。
2003年に、環境プロジェクトへの融資を目的とした非営利団体「ap bank」の設立に始まり、関連イベントの野外音楽祭「ap bank fes」、そして東日本大震災の被災地を舞台にした音楽とアートの総合祭「Reborn-Art Festival」開催へと発展。
2019年11月には一連の活動の集大成として、千葉県木更津市の30ヘクタールにおよぶ広大な敷地に体験型ファーム「KURKKU FIELDS」をオープンした。
小林さんは社会の何を変えようとしているのか? 率直な疑問をぶつけてみた。

日本人もそろそろなんとかしなきゃいけない

――活動は、ミュージシャンの坂本龍一氏と桜井和寿氏の3人で出し合った資金をもとに2003年に設立した非営利団体「ap bank」の活動から始まりました。その経緯についてまず教えてください。

直接のきっかけは、2001年9月11日に起きたニューヨークの同時多発テロです。僕はあの当時、ニューヨークのスタジオでも音楽活動をしていたので、非常に大きな衝撃を受けました。

マネーゲームのようなアメリカ的な資本主義経済と、そうでない国とのぶつかり合いは、その前からもありましたが、まさかあれほど派手な攻撃が起きるとは思わなかった。

エネルギー問題、環境破壊、テロ、戦争……、これらは資本主義経済に端を発した、負の連鎖だとも思っています。それを断ち切るために、一個人として何ができるか考えるようになりました。

僕は、富や権力に反発したジョン・レノンやボブ・ディランの歌を聞いて育った世代でもあり、日本人もそろそろなんとかしなきゃいけない、と本気で思いはじめた。そういうことを、ニューヨーク在住の坂本さん達と話し合っている頃に「未来バンク」をやっている田中優さんと出会って、「市民バンク」の存在を知ったんです。

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