「インスタグラムで買い物」は日本で定着するか アプリ上でショッピング機能を続々強化

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――チェックアウト機能を展開すれば、消費者の購買行動がわかります。これはインスタグラムの収益源となっている広告ビジネスの追い風になるのでしょうか。

チェックアウトだけでなく、ショッピング機能の強化自体が広告ビジネスにはメリットがある。ユーザーが商品を見たり検索したりすることで、われわれは彼らが何に興味を持ち、わくわくしているかがわかる。ショッピングタグだけでも、ブランドはリーチを広げられる。もちろんチェックアウト機能があれば、購買行動を把握できるのは確かだ。

あくまでも友人や家族とつながる場所に

――インスタグラムはどういう方向に進むのでしょう。ECのプラットフォームなのか、それともコミュニケーションのプラットフォームなのか。

ユーザーは親しい友人や家族など、大事に思っている人とつながるためにインスタグラムを使うと考えている。ただそれだけではなく、彼らは興味に従って、深いところに入っている。ユーザーが毎日アプリを開くのは、大事な人たちの近況を知りたいからだ。写真の投稿やストーリーズ(24時間で消える投稿)を見終わると、興味のあることを深掘りしに行く。

ヴィシャル・シャー(Vishal Shah)/インスタグラムの製品部門責任者(Head of Product)として消費者・広告主向けプロダクトを統括。マーケティングアナリティクス企業のターン社やアクセンチュアを経て、2015年にインスタグラム入社。カリフォルニア大学バークレー校でコンピューターサイエンスとビジネスの学士号を取得(撮影:梅谷秀司)

ある人はショッピングに興味を持ち、ある人はクリエイター(いわゆるインスタグラマー)が投稿した「IGTV」(インスタグラム上の長尺動画)の動画を見に行く。インスタグラムを使っているからといって、ショッピングをしなければならないわけではないし、クリエイターをフォローしなければならないわけでもない。ただそれらを望んだと思ったときに、簡単にできるようにしたい。

だからサービスの根幹は友人や家族とつながることには変わりはない。興味に応じてより深い体験ができるよう投資をしていく。

――今年、アメリカ国外では初めて製品開発のチームを日本で立ち上げました。この狙いは。

このチームの目標は、日本のためだけに開発をすることではない。われわれの開発プロセスではユーザーリサーチに多くを頼っている。このチームはユーザーの行動を深く理解し、すべてのユーザーに使ってもらえる製品開発をしてもらう。

確かにアメリカ以外にチームを設けるのは初めてで、異例の取り組みだ。日本市場はさまざまな点でユニークであり、インスタグラムにとって重要だ。今回の来日でも日本の文化について多くのことを学んでいる。日本のチームが学んだことを生かして、開発の優先順位をつけていく。

――日本市場のユニークさとは。

まず市場が大きいということ。世界で3番目の広告市場であり、インスタグラムがビジネスをしている地域だけでみると、2番目に大きい。ユーザー数の面でも成長は著しく、プロダクトが日本の市場に合っていると感じる。全体としてビジネスはうまくいっている。ただ何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのかを慎重に考えていくと、もっとできることがあると思っている。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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