スワボーダ氏はそういう「オーディエンス愛」を明確に見いだしているのがわかる。
子供を対象にしたプログラムの創造と上演実現に至る過程において、プロ演奏家やそれを目指す学生にとってはあまり普通は思いつかないような道をスワボーダ氏はたどった。
オーケストラでの演奏やアンサンブルでの演奏を目指そうとするのではなく、チューバ演奏を通じて子供達への教育をしようと望む。
そのために、教育現場に対して「自分以外の人」が演奏するグループをプロモーションする仕事を見つける。さらにその仕事を通じて、プロジェクトを興し実現するために必要なことが学べる別の仕事を経験する。
この流れは、転職していくことを通じて異なるスキルや経験を獲得してスキルアップとキャリアアップをし、より大きな仕事をしていくというもので、一般的な企業の世界では当たり前の流れだ。
しかしクラシック音楽の世界では、話題に上ることもなければ発想されることもまれなものである。それだけクラシック音楽の世界が異質かつ高度に専門的、その避けられない裏返しとしてせまいことでもあるということだ。
キャリアは組み合わせで作られている
そういう世界で生き、学ぶひとにぜひ触れていただきたい、スワボーダ氏の言葉がこれである。
━━「音楽家として、わたしたちが”成功”というものを考えるとき、A地点からB地点へと道筋がきれいにできていて、そこをいかに走り抜けるか、というふうに考えがち。
でも現実には、道はジグザグで、あまり人が歩んできていない舗装されていないような道を歩んでたどり着く場所が”成功”であることのほうが多いと思う。どんな”未舗装”の道を歩むかという選択が、あなたのキャリアに影響を与える。たどり着く場所というのは、目の前のタスクに対して辛抱強く、十分な献身でもって取り組み続けた結果。その過程は大抵、きれいに舗装された道じゃない。
よく授業でする話なのだけれど、キャリアというのは、自身が選択するいくつもの異なる道の”組み合わせ”で作られているのよ、と。それがわたしたち音楽家、芸術家のあり方なのね。だから、生計を立てるために、いろんなことを同時にやっていたとしても、それは失敗者ではない。やりたいことをやるためならね」━━。
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