NHK、「常時同時配信」実現への遠い道のり 高市大臣の「ちゃぶ台返し」に噴出する批判

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ほかの有識者からも「そもそもなぜ2.5%という数字ありきで議論されているのか」という疑問が噴出。憲法とメディア法に詳しい慶應義塾大学の鈴木秀美教授は「NHKの自律が阻害されてしまう」と批判する。

今回、総務省が出した基本的考え方は、大きく2つの部分からなる。「NHKの業務全般に関する考え方」と「インターネット活用業務に関する考え方」だ。

不徹底なNHKのガバナンス改革

実施基準の可否は、法令に従って基準が作られているかどうかで判断されるべきだが、総務省の基本的考え方は、実施基準の認可とは無関係のNHKのガバナンス改革やBSのチャンネル数削減などを議論している。

高市大臣は12月10日の記者会見で「放送事業者などからはおおむね賛同する意見が寄せられた」と胸を張るが、鈴木教授は「本来そうしたガバナンス改革などは有識者会議や法改正時に求めるべきものだ。常時同時配信の実現を人質にして、業務改善を求める姿勢はNHKへの過剰な行政介入だ」と指摘する。

一方で、高市大臣が指摘するようなNHKのガバナンス改革が徹底されていないことも事実だ。有識者会議では、受信料と業務、ガバナンスの3つを「三位一体」で改革することが求められていた。しかし、受信料の値下げや子会社の統合などを実施しているが、NHKは抜本的な改革に乗り出していない。総務省の基本的考え方が出たのも、NHK自らの怠慢がきっかけとなった可能性がある。

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