音楽業界ビビらせたテイラー・スウィフトの乱 投資ファンドのカーライルまで巻き込んだ
マスター音源およびそれに伴う諸権利を自分で保有しているアーティストは珍しい。大手レーベル所属のアーティストで言えば、ジェイ・Zやメタリカ、ジャネット・ジャクソンなどごく一部だ。
一般的にレーベルは、アーティストに先行投資することで負うリスクと引き換えに、そうした資産を手に入れる。だがスウィフトは自分の作品を自分でコントロールしたいという意向を明らかにしており、それは昨年、ユニバーサル・ミュージック・グループと結んだ新たな所属契約においても重要な条項となった。
未公開株投資会社とアーティストの相性
スウィフトとブラウン(そしてカーライルにいるブラウンのパートナーたち)との対立は、スーパースターのソーシャルメディアの力Vs.従来型の音楽ビジネスの衝突という形で現れた。また、アーティストと未公開株投資会社の相性が意外によいことも明らかになった。ファンドは製造業や消費財大手の取締役会との取引には慣れていても、娯楽産業の人気者を相手にするのは不慣れなはずなのに。
「未公開株投資会社の人々は音楽著作権を『不動産みたいなものだ』と思いがちだ。だがそれは違う」と語るのはソングズ・ミュージック・パブリッシングの創業者マット・ピンカスだ。同社は2017年に買収された。「相手は呼吸している生身のアーティストなのだから」。
カーライルは2013年にドクター・ドレーのヘッドフォン会社ビーツ・エレクトロニクスに出資。2017年にはブラウンが経営する娯楽産業の持ち株会社、イサカ・ホールディングスに初期投資を行った。
また、ワシントンに本社を置くカーライルはジョージ・H・W・ブッシュ元アメリカ大統領やジョン・メイジャー元イギリス首相といったかつての国家指導者相手に投資アドバイザリー業務を行っていたこともある。ある意味、スウィフト問題における仲介役としてはうってつけの存在だった。
だが同社のポートフォリオ・マネジャーたち(たいていダークスーツを着て細いネクタイを締めている)は、スニーカーや革ジャンを身に着けたミュージシャンや、ビジネスを個人的なものとして捉えがちなマネジャー相手の取引には慣れていない。