日本人は自国の豊かさの現実をわかっていない GDPは大きいが1人当たりで見るとバランス悪い

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実際に、企業の内部留保(利益剰余金)は7年連続で増加しており、金融業・保険業を除く全産業ベースで463兆1308億円(2018年度)となっている。金融業、保険業の内部留保は、自己資本比率規制があって一定の資産を保有する必要があるため、企業の内部留保の数値には含まれないが、金融業・保険業の資産も含めれば、相当の資産を企業が保有していることになる。

ちなみに、日本銀行の国債保有高もここに来て500兆円となっており、43.9%の国債を中央銀行が保有しているという歪んだ構造になっている。

財政赤字の処理方法で日本の未来が変わる?

日本の豊かさを考えるうえでどうしても避けられないものに、世界でも例を見ない莫大な財政赤字がある。1122兆円もの財政赤字は、当然のことながら負の資産になるわけだから、このまま放置した場合、どうなるのかが心配だ。

いまや日本の資産には、世界中の投資家が投資しており、グローバル経済の中では外国人投資家が「日本売り」に出てしまうことが最も大きなリスクと言っていい。現在の日本は、世界中に投資した利息や配当による収益が経常黒字の大半を占めている。要するに「金貸し国家」だ。

実際に、株価も下がらないし、円相場も安定している。現在の政権を支えている原動力にもなっているわけだ。日本の豊かさを維持している証拠と言っていいのかもしれない。

日本円が安全資産と言われる背景には、世界の金融マーケットで何かがあったときに、世界中に投資している日本の投資家が外貨を売って日本円に戻すために、どうしても円高になる。

また、高頻度売買といったプロの機関投資家が希望する投資環境も、日本には揃っている。システム的にも、投資家の数という面でも、世界有数の「流動性」を日本は確保できている。そのおかげで、日本の国債や株、円はたたき売られずに済んでいるとも言える。

筆者の個人的な考えだが、日本経済が失われた20年とも30年とも言われ、日本病という景気低迷のサイクルから抜け出せないにもかかわらず、日本の金融市場が現在も安定して推移している背景には流動性があると考えている。

いつでも莫大な金額が、安定した形で売買取引できる限り、外国人投資家は日本を信頼して取引をする。言い換えれば、この流動性が枯渇したとき、日本の強みは失われるのかもしれない。たとえば、日本国債は間もなく流動性を失う可能性がある。日銀が半分以上の国債を買い占め、その流動性を枯渇させようとしているからだ。

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