日本人は自国の豊かさの現実をわかっていない GDPは大きいが1人当たりで見るとバランス悪い

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日本の豊かさの実態が正確にはつかめていないが、このままの状態を日本は維持していくことができるのか。最後に、この豊かさを脅かす存在とは何かを考えておこう。簡単に紹介すると、およそ次のようなものが考えられる。

GDPだけでは国の豊かさは測れない

●人的資源の衰退……人口減少をはじめとして、健康や教育といった資源の衰退は日本の成長に陰りを落とす。少子高齢化がリスクであることは容易に想像できる。
●気候変動……日本の豊かさのひとつである森林や海洋の資源が、気候変動によって脅かされている。気候変動で森林が破壊されれば治水が機能しなくなり、農産物に大打撃を受ける。海産物の減少と並んで食糧不足をもたらす。
●資源価格の高騰……石油や穀物などの食料品を輸入に頼っている日本にとって、貿易収支の悪化は大きな痛手になる。資源価格の高騰は、日本の富にダメージを与える。
●財政赤字……現在の政府の財政赤字をどうするかが大きな問題だ。現在の日本は、企業も個人も、政府に依存した体質になっている。施設を作る、学校を設立する、イベントの実施……、どれをとっても国の「補助金」ありきでスタートしている。アメリカのように、クラウドファンディングといった民間投資の概念が低い。そのために、経済そのものが政府主導となり、財政赤字は一向に減らない。さらに、どうしても企業活動優先になっていく。財政赤字をどう処理できるかが、日本の豊かさを維持する大きな課題だ。
●金融マーケット……日本の経常黒字が投資によって支えられている以上、投資にはリスクがつきものだ。アメリカ株やアメリカ債、あるいは世界の企業価値が下落すれば、投資立国・日本は計り知れないダメージを被る。

この他にも、技術革新による変化は世界の富の構図を変えるかもしれない。いずれにしても、GDPだけでは国の豊かさは測れないということだ。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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