日本人は自国の豊かさの現実をわかっていない GDPは大きいが1人当たりで見るとバランス悪い
日本が豊かであることの原動力は、原材料や資源を輸入して自動車などを製造して世界に販売。貿易黒字によって外貨を稼ぎ、食料品やエネルギーなどを購入して豊かな暮らしができている……、と思いがちだ。しかし、GDPの内訳を見ると「個人(民間)消費」が圧倒的に大きなウエイトを占めていることがわかる。
消費税率の引き上げに合わせて、政府が躍起になって個人消費が下がらない政策を打ち出しているのも、個人消費の低迷がそのままGDPの低下に結びつくからだ。アメリカのGDPが巨大なのも、借金しながらでも消費しようとする、その楽観的な国民性に理由があるのかもしれない。最近は、中国人の消費も大きなパワーになっている。
GDP以外で注目したいのは?
国の力を図るものとしてGDP以外で注目したいのは、「貿易収支」や「経常収支」と言った指標だ。とりわけ、日本の強さは貿易黒字や経常黒地の存在が大きいと長い間言われてきた。しかし、近年、貿易黒字は減少の傾向にある。実は、貿易収支以外の黒字が日本の国力を支えていると言っていい。経常収支の中身は、次の4つで構成されている(数字は日本貿易会調べ)。
2019年度の見通しでは、日本の経常黒字は19兆8760億円。現在では、第1次所得収支が日本を支えていることがわかる。貿易収支は、このところ慢性的に赤字が続いている。2017年度はかろうじて黒字になったものの、2018年度、2019年度と赤字になる見込みだ。
日本の貿易収支が赤字に転落したのは東日本大震災がきっかけで、エネルギーや鉱物性燃料の輸入額が増え、2012年~2015年にかけて赤字となった。経常収支も赤字にこそならなかったものの、大きく減少することになる。
経常収費が黒字であるうちは、莫大な財政赤字を抱える政府がデフォルト(債務不履行)に陥る可能性は低い……、という考え方がある。莫大な財政赤字があるにもかかわらず、日本円が暴落したり、株価下落や金利が跳ね上がらない……。そのポイントは「経常収支」にあるという専門家も多い。言い換えれば、慢性的な経常赤字の状態になれば、日本の富は徐々に失われていく、というわけだ。
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