経理は意外とクリエーティブな仕事である理由 数字を経営に活かすことができる貴重な存在
しかし、目の前にあるせっかくの宝も、作るだけで精いっぱい、ただ持っているだけでは、価値を生み出すことはできません。宝の持ち腐れにならないためには、「どういう切り口で数字を使うか」という発想が必要です。
もし、今まで会社全体でしか数字を見ていなかったのだとしたら、もっとさまざまな切り口で数字を作れることにぜひ気がついてほしいと思います。例えば、売り上げであれば部門別はもとより、
• 客数×単価に分解
• 地域別、商品別、お客様別
• 時系列、気候との関連
など、いくらでも切り口が出てきます。このように、数字を細かく分析していくことで、全体の売り上げだけではわからなかったことが見えてきます。
「営業の売り上げは伸びているけれど、商品別で見ると、黒字と赤字の差が随分あるな」ということがわかったら、採算が悪い商品のテコ入れをしたり、販売を止めたりするなどの選択肢も考えられるようになります。
また、「このお客様の売り上げがこんなに高いのは、なぜなんだろう?」「この営業マンをほかの営業のモデルにしてノウハウを共有しよう」「生み出している付加価値が高いものを中心に活動しよう」などとさまざまな分析にも使えますし、投資や資金繰りの判断材料にすることもできます。
「経費削減」だけでは乗り切れない
現在、日本の中小企業は大きな時代の変わり目に立たされています。キーワードは「生産性の向上」です。
「働き方改革関連法」によって、企業における生産性の向上がよりクローズアップされるようになりました。子育てや介護などを考慮した、柔軟で多様な働き方は、これからますます一般的になっていくでしょう。これからの経営者には、社員が毎日遅くまで残業しなくても限られた時間でどう仕事をこなせるようになるかという観点が求められます。
また、労働者人口の減少は、人手不足を深刻なものにしています。今後、日本の少子高齢・人口減少に伴い、人手不足解消はますます重要なミッションになっていくでしょう。その意味でも、生産性の向上はもはや待ったなしで取り組むべき課題です。
無駄を見直すというと、「経費削減」などと締め付けに走りがちですが、もはや「経費削減」だけでは乗り切れないということを、実感していらっしゃる方も多いことでしょう。私が提案する「攻める経理」は、もっと別の視点から生産性向上を実現していきます。
「攻める経理」のことを、私は「経理の最適化」と呼んでいます。「経理の最適化」とは私の造語ですが、「最も効率的に数字を作り」「最も効果的に数字を使う」、その組み合わせのことを指しています。
数字を積み上げていき完成させるところまでは、誰がやっても同じ答えが出ます。ここはトコトン効率化をする。これが「最も効率的に数字を作る」というプロセスです。そうして出来上がった数字をいかに経営に活かしていくか、これが「最も効果的に数字を使う」ということです。「最も効率的に数字を作る」は「攻める経理」の第1のステップです。
そして、「最も効率的に数字を作る」ために必須となっていくのが、IT、クラウド、AI、RPA(Robotic Process Automation)などのテクノロジーの活用です。経理の現場にも徐々にAIが導入されつつありますが、AIの強みを活かしきれているケースはまだまだ少ないように思います。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら