「おもてなし」が日本を救う? ホスピタリティ産業のトップが語る「おもてなし」

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東京五輪招致で滝川クリステル氏が「お・も・て・な・し」のプレゼンをして以来、「おもてなし」が日本を活性化するキーワードとして注目を集めている。しかし、おもてなしは1日にして成らず。その真髄は奥深い。
ホスピタリティ産業の代表格であるリッツ・カールトンの元日本支社長・高野登氏と、スターバックスコーヒージャパンの元CEO・岩田松雄氏は、現在の日本の風潮をどうとらえているのか? 『スターバックスのライバルは、リッツ・カールトンである。』(KADOKAWA 角川書店)の共著者である2人が「おもてなし/ホスピタリティ」について熱く語り合った。

長野で学んだ「隣三尺」の教え

――「おもてなし」という言葉が、今、話題になっていますが、その本質についてお伺いしたいと思います。ホスピタリティ、あるいはおもてなしというものは、マニュアルから生まれるものなのでしょうか? それとも自発的に生まれるものなのでしょうか?

高野:ホスピタリティは、外資系企業ではよく耳にする言葉ですが、今では国内のあらゆる企業でも使われるようになりました。もともと日本にはホスピタリティという言葉がありません。英語ですから当然ですね。ホスピタリティは、日本語のおもてなしと同意語と言えます。ただ背景はだいぶ違います。おもてなしは「何を以って、何を為すのか」という思想からきている言葉です。一方、ホスピタリティは西洋の文化であり、若干の宗教的なニュアンスも含まれた言葉です。ただ、本質的には、同じところに行き着きます。

私たちがリッツ・カールトンで培ってきた考え方ですが、ホスピタリティというのは、「仕事をするプロとしての、組織における営みのかたち」だと思うのです。「働く」という大事な営みを、心の深いところでどうとらえるのかというところから見えてくるもの、と言えますね。それに対して、サービスは、「提供する価値を可視化できるものであり、明文化できるものである」とする考え方です。したがって、サービスを徹底するのであれば、マニュアルを作ることで実現できないことはありません。

私の生まれた長野県では、雪の日に使う「隣三尺」という表現があります。家の前の雪を片付けるときに、隣の家の分も三尺、お互いに片付け合うという習慣です。もちろん「三尺分片づけなさい」とはどこにも書いてありません。これなどは長い年月の中で育まれてきた、お互いを思いやり助け合う精神、価値観だと思うのです。

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