「おもてなし」が日本を救う? ホスピタリティ産業のトップが語る「おもてなし」

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だから、そういう思いが、自然に生まれ出るような営みの場を作っていくことが、ホスピタリティの土壌を作る原点だと思っているのです。つまり、サービスとは違い、ホスピタリティはマニュアルから生まれるものではなく、心の中の思いから出てくるものなのですね。ただ、それが自発的に生まれるようにするためには、もう少し仕組みが必要になるのです。

スターバックスにはサービスマニュアルがない

岩田:スターバックスにはサービスマニュアルがなくて、あるのは「Just Say YES(ジャスト・セイ・イエス)」という基本姿勢だけです。でもその前に、おいしいコーヒー、快適な店舗環境があるというのが大前提。どんなに接客がよくても、コーヒーがまずかったら誰も来ないし、店舗の雰囲気が悪くても来ないですよね。そこのハードの面を整えるには、マニュアルが必要だと思うのです。だから、スターバックスにはサービスマニュアルはないけど、オペレーションマニュアルはあります。それはけっこう細かく決まっています。でも、それを超えた部分は「人」のゾーンで、それが「ジャスト・セイ・イエス」なのですね。おもてなし=思いやりであったり、心遣いであったり、ということだと思います。

マニュアルどおりにやるということは、ある程度のレベルの人ならできるかもしれないけれど、その先の思いやりとか、相手の気持ちになって動くということは、マニュアルに書けない、すごく高度な部分だと思うんですね。これは、その人の「人間力」みたいな部分が問われてくる。それにはやっぱり採用のところから、見極めていかなくてはならない。もちろん、ある程度、トレーニングすることはできるけれども、もともとその人が持っている人間力みたいなものがないと、いくら教えても形だけの接客になってしまう。人のために何かをしてあげたいと思っていない人をいくらトレーニングしても、その先のことをいくら教えても駄目だと思うのです。

スターバックスの奇跡は全国で1000店舗、従業員2万2000人を超えて、あのクオリティレベルを守っていることです。すごいと思いますね。30店舗ならできるかもしれないけれど、これだけの数があるのに高いサービスを維持できる。日本のスターバックスのレベルは本当に高いと思いますね。

それは、やっぱり採用段階から、もともとレベルの高い人を採用できているからだと思います。そう言っちゃうと身もふたもないのですが、これが非常にいい循環で回っている。「スターバックスのお店に行ってみたら感じがよかった→ここで働いてみたい→応募が多くなる→そこからスターバックスに合った人を選べる」というグッドサイクルになっているのですね。もちろんスターバックスでも辞めていく人はいます。『ビジョナリーカンパニー』(ジェームズ・C・コリンズ、ジェリー・I・ポラス)にも書かれていますが、そこのカルチャーに合う人は残って、合わない人は辞めてもらったほうが、お互いにハッピーなのです。私も入社したときに、お店に入って研修を受けましたが、商品オーダーのコーリングが恥ずかしくてできなくて、口パクでやっていましたけどね(笑)。ああいうことを普通にできる人はたぶん残るでしょうし、「こんなバカらしいことやってられない」と思う人は残らないですよね。そうやってカルチャーが純化していくようになっている。

やっぱり日本のスターバックスの創業期の人たちが、しっかりしたカルチャーを作ってくれたのだと思います。すばらしいと思いますね。そしてそれが維持されている。900店舗になっても1000店舗になっても、そのクオリティを保っている。本当に奇跡だと思いますね。

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