スウェーデンのマイナス金利解除が持つ意味 2020年に向けてECBや日本銀行に大きな示唆

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そうした状況にもかかわらず利上げを決断した背景について、同レポートでは「もし、マイナス名目金利が永続的な状態だと見なされた場合、経済主体の行動は変わり、悪影響が浮上してくるかもしれない」としている。さらに、報告書では「金融政策の副作用」と題したBOX欄を設け、「このままいけば個人預金にマイナスを課す流れになる(ドイツやデンマークでは始まっている)」と指摘している。

リクスバンクは現在、スウェーデンの民間銀行が個人預金にマイナスを課していないのは「マイナス金利があくまで一時的なものだと受け止めてられているから」と分析し、「もし永続的とみなされたら、家計部門へのマイナス金利適用は排除できない」と懸念を示している。

資産価格の騰勢と家計の債務膨張

そのほか「マイナス金利の必然として資産価格(とりわけ住宅価格)が騰勢を強めていること」そして「住宅価格上昇の結果として家計部門の債務が所得対比でも上昇傾向にあること」などが指摘されている。

現状、リクスバンクが最も気にしている論点がこれである。報告書では「過剰なリスクテイク」に懸念が示され、資産価格の著しい騰勢が続いた場合、家計部門を含め複数の経済主体が持続不可能な軌道で債務を積み上げてしまうことを恐れている。

スウェーデンの家計債務は可処分所得対比で見てもその比率が上昇傾向にあり、予測期間中も悪化傾向は続く見通しだ。こうした状況のもとで、住宅価格が下落に転じた場合、家計部門のバランスシート調整を通じて実体経済が長期停滞に追い込まれる懸念は決して小さなものではあるまい。

なお、マイナス金利解除を経て住宅価格のトレンドも変わることが想定されているようだが、そううまく行くものだろうか。

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