箱根駅伝を席巻「進化した厚底シューズ」の衝撃 「靴」に注目すると、観戦はもっと楽しくなる
どの選手も靴に対しては「俺はこのメーカーのアッパーとサイズと履き心地。そしてこのソールの反発と路面のとらえ方が合う」というようなこだわりを持っています。そのうえ、絶対、外すことができないレース、箱根駅伝の予選会ですから、それぞれの選手にとっては、「自分の集大成」のような走りをする必要があります。
そういう外せない場で、みんなが「同じ靴」を履くようになっている。もはや単なるはやりとは言えません。他メーカーの靴を履く予定だった選手が、監督から「『ヴェイパー』を履いてくれないか」と言われたというケースもあると聞いています。
61歳日本人女性が、フルマラソン女子の世界記録
――なぜそこまで「ヴェイパー」が増えているのですか?
ナイキから厚底が登場したのは2017年7月、まずは「ヴェイパーフライ4%」という初代モデルを大迫傑選手が履いて話題になりました。
ただ、初代の「ヴェイパーフライ4%」は、それまでの作り上げたフォームと合わない人も多く、この靴にフォームを変える必要もあるし、そのフォームをキープしたままハーフマラソンやフルマラソンを走り続けるには、そのための技術も必要とされる、まるでF1カーを運転するようなシビアな靴でした。才能ある一部のトップアスリートにしか、履きこなすのが難しいという面もありました。
しかし、あれから2年。ヴェイパーは「熟成」「進化」したんです。
――ヴェイパーが「熟成」「進化」した、というのは?
iPhoneが見つかったバグを、OSをバージョンアップによって改善するように、この「ヴェイパー」というシューズも2年間かけて「熟成」させたことにより、ついに万人がうまく走れる「ヴェイパー」が誕生したのです。それが昨年7月に発売された「ヴェイパーフライネクスト%」で、これが箱根駅伝を席巻しそうです。
実際、駅伝に限らず、いまや「ヴェイパー」はランニング界を席巻しており、その効果は目を見張るものがあります。
例えば、昨年12月、さいたま国際マラソンで、「ヴェイパー」を履いた61歳の弓削田真理子選手が2時間56分54秒をマークして、60歳以上のフルマラソン女子世界記録を2分21秒更新しました。
また、昨年11月のパラ陸上世界選手権では、男子1500m視覚障害部門の和田伸也選手と並走者の中田崇志さんのペアが日本新記録で4位。東京パラリンピック代表に内定しました。
彼らは2016年のリオではメダルを逃しましたが、その後、中田さんが「ヴェイパー」の存在に気がついて、トラック種目に「ヴェイパー」を取り入れたのです。彼らの年齢は40歳をすでに超えています。市民ランナーとして走られている方なら理解できると思いますが、この年でスピードが必要とされる1500mで記録を更新し続けるというのはありえないことなのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら