箱根駅伝を席巻「進化した厚底シューズ」の衝撃

「靴」に注目すると、観戦はもっと楽しくなる

では、今年の箱根駅伝は、どの大学が優勝するのか。どこもみんな「ヴェイパー」を履いてガンガン突っ込んできますから、とくに往路は、先頭が何度も入れ替わる可能性があります。どの大学も開学以来初めて「一瞬だけトップ」をとれるかもしれません。

混戦も予想されますが、その中でも私が注目しているのは「東洋大学」です。

東洋大学の総合優勝なるか

近年、強豪校でありながらも青学の後塵を排して総合優勝からは遠ざかっていた東洋大学。彼らは戦略的に「ヴェイパー」を取り入れて、2年連続往路優勝を果たした。そして3年目、とうとう復路も制覇して、ついに総合優勝を狙えるんじゃないか――ということを密かに考えています。

西本 武司(にしもと たけし)/「EKIDEN News」主宰。吉本興業、ほぼ日刊イトイ新聞を経て、コミュニティーFM「渋谷のラジオ」制作部長。"公園橋博士"の名前で駅伝をどこよりも細かく追っかけるWEBメディア「EKIDEN News」を主宰するほか、「TOKYO FREE 10」「オトナのタイムトライアル」など新しいレースを企画する。ランニングを始めて9年。走ること、見ることと多角的にマラソンレースを楽しむ。2017年ニューヨークシティマラソンにて(写真:EKIDEN News)

下馬評では、優勝候補は「東海大学」と「青山学院大学」です。10,000mやハーフマラソンのタイムからそう予想されるわけですが、なにしろ東洋大学は、「ヴェイパー」を取り入れることを前提で練習を積み上げてきて、ついにどの選手も「うまく走る」ということができるようになっています。

下馬評をひっくり返し、往路で優勝した2年前、1年生だった選手は3年生になり、さらに、靴そのものが改善され、どんな選手でもスピードを出しやすい靴となった。今の「ヴェイパー」は疲労度がかなり軽減され、最後の最後まで足が残る靴です。

これは30km走のようなハードな練習を積んでも疲れがさほど残らないということでもあります。故障のリスクも減り、月間走行距離も増えていきます。そのような環境で「3年以上履き続けた」という利が、東洋大学に傾く可能性はかなり高いと私は見ています。

そんな中、ライバル校も新しい動きがあります。青学は「アディダススクール」と呼ばれ、主力選手はずっとオーダーで作られたアディダスを履いていました。

ところが、昨年の全日本大学駅伝直後から、青学の選手たちの中にも「ヴェイパー」を履く選手が一気に増えた。アディダスからも、今シーズンは「ヴェイパー」同様のカーボンソール内蔵のシューズが登場しましたが、主力選手たちの大半が選んでいるのは「ヴェイパー」です。原晋監督は「靴は選手が自ら選ぶもの」とおっしゃっていただけに、選手たちがこぞって「ヴェイパー」に流れていったのは注目に値するでしょう。

そして、昨年の優勝校、東海大学ですね。昨年4月からナイキに切り替えました。実は、その東海大学の両角速監督が、今、選手たちと一緒にどんどんロードレース(10kmくらい)に出場し続けています。試合会場でも選手と一緒にジョグをしている姿もよく見かけます。

両角監督は、数々の名選手を輩出した「佐久長聖」に陸上部を立ち上げた人物です。大迫傑選手らに代表される、佐久長聖高校の美しいフォームは両角監督自らブルドーザーで造成したクロスカントリーコースで培われたもの。その監督がレースに出場するときの足元はやっぱり「ヴェイパー」なんですよ。

おそらく、東海大学にとっての理想の箱根の走りを、自ら走り込んで見つけようとしているのだと思われます。今後、「あっ、東海大学の走りだね」と言われるような美しい「ヴェイパー」のフォームで走る選手が次々と登場する可能性があります。

箱根駅伝は「靴」に注目して観戦すると、また違った楽しみがあります。箱根駅伝は今年で96回目。箱根駅伝もランニングシューズも、今後、さらなる進化を遂げてゆくでしょう。

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