日本が「韓国文学」から受けたすさまじい衝撃 編集者たちが見る「ブームの背景」
井口:原文がすごく淡々としているということですが、事前にK-POPのファンの方が注目しているという情報が入ってから、斎藤さんが若い読者のためにより読みやすく、手を加えてくださいましたよね。
斎藤:普段は、形容詞や動詞が少しわかりにくいかなと思っても、これをきっかけにその言葉を知ってほしいという気持ちから使ったりしますが、この本は若い方たちがストレスフリーで読めたほうがいいかなと思って、少し、後から変えたりしました。
ただ、小説の文体じゃないから難しいんですよね。「キム・ジヨン氏、キム・ジヨン氏」と連発するじゃないですか。「キム・ジヨンさん」でもいいのですが、全部「さん」で訳してみたらベタベタして読みにくかったので、カルテだからということもあって「氏」のままにしました。今でも「これでよかったのかしら」と思うことがあります。
井口:「さん」よりも「氏」だから客観的に読めるんですよね。
斎藤:最初は違和感があると思います。入っちゃうとスッと読めるんですが入るまでが大変。とにかく変わった文体だから苦労しましたね。
韓国の社会背景を知ってもらうために必要だった解説
坂上:あと、伊東順子さんの解説がすごくよかったですね。
斎藤:適切な解説がないと絶対この本は成り立たないと思ったので。キム・ジヨンというのはどういう人なのか、小説だけ読んでも、時代背景や韓国社会の変化を知らないとわからない。私にはこの本の解説は書けないので、最初から伊東順子さんに頼もうと思っていました。
井口:『キム・ジヨン』に至るまでの経緯や、この本をきっかけにフェミニズムがいかに盛り上がったか、伊東さんが詳しく書いてくださって。解説の反響もすごく大きいですね。
斎藤:私が知っている範囲で、伊東さんほど韓国社会を知っている人はいないんですよ。いろいろな本や記事を読んだあと、伊東さんの解説を聞くとなおさらよく理解できるので、「絶対あなたしかいないから」と説き伏せて書いてもらったら、案の定とてもよかったです。
「韓国・フェミニズム・日本」特集で評判がよかった「韓国文学一夜漬けキーワード集」でも、伊東さんにたくさんの項目を執筆してもらいました。
(次回に続く)
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