iDeCoとNISA、税制改正で「得する人、残念な人」 メディアも見落とす加入条件とリスクに注意
令和2年度の「税制改正大綱」が発表になりました。私が専門とする分野では、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)の制度改定が打ち出されています。これらの制度改定は一部に「複雑になった」という批判があるものの、少なくとも拡充される方向で間違いありませんので、資産形成をする人にとってはよいことだといえるでしょう。
ただ、新聞やテレビの報道では、その改正内容を正しく伝えていない部分や勘違いを招くような表現もあります。そこで今回の税制改正大綱による改正点と、誤解しやすいところについて指摘しておきたいと思います。
会社の規約なくして確定拠出の加入期間は拡大できない
まず、今回の税制改正大綱ではiDeCoのような個人型確定拠出年金に限らず、確定拠出年金全般について5つの改正点が示されています。
①掛け金を積み立てられる期間の拡大
②受け取り開始時期の範囲の拡大
③制度を実施できる企業の範囲の拡大
④サラリーマンが従来よりもiDeCoに入りやすくなる
⑤退職や制度変更に伴う資産の移管の選択肢を拡げる
中でも、報道でよく取り上げられているのが①掛け金を積み立てられる期間(加入期間)の拡大です。「現在60歳までとされている加入期間を企業型確定拠出年金は70歳まで拡大する。iDeCoは65歳まで拡大する」といった報道が目立ちますが、この内容はあまり正確ではありません。
企業型確定拠出年金については、加入できる大前提があります。厚生年金に加入していることと、加入が労使で定められた規約で認められていることです。多くの報道では、企業型確定拠出年金の加入期間を60歳から拡大できることを今回の税制改正大綱のポイントに挙げていますが、この2つの大前提を踏まえなければなりません。
一方で、現在でも65歳まで加入できる規約を設けている企業もありますし、厚生年金も70歳まで加入できるようになっています。今回の税制改正大綱は、今後70歳まで働く人も増えると考えられることから、企業型確定拠出年金について「規約で定めれば」70歳まで加入できるよう提言したわけです。
60歳以降に再雇用で働く場合、時短勤務等で厚生年金に加入していなければ、企業型確定拠出年金には加入できないのは今後も変わりません。70歳まで加入できるようになっても、それは必要条件であり、「規約で定める」という十分条件がないと加入できないということなのです。
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